振り向けば、キス。
波樹は、玄関の戸に手をかけ、一気に引き開けた。
引く際に左手に生じた静電気に弾かれたような感覚は、いつもより強固に施されていた結界のせいだ。
そして、外に足を踏み出したその途端、想像を遥かに凌いだ気の乱れに波樹はたたらを踏んだ。
「それみたことか。雨宮の敷地から出て、市街地に行ってみろ。
お前など立っておれんぞ」
勝ち誇ったような祖父の声。
それに、歯向かいそうになった、正にその時だった。
複数の、悲鳴が波樹の耳に届いた。
「――――!」
波樹は考える間もなく、唯その方向へと走り出していた。
助けないと!