振り向けば、キス。


****


――この世で、大切なことはなんだ?


自分は、迷わず『天野』と、そう答えるだろうと桜は思う。


それはもう、刷り込みのように自分の頭に植えつけられている真実であると同時に、自分の胸に巣くう本心でもあった。

家族や、親戚、そして幼い頃から共に育ってきた楓や桃、柚と言った従兄弟たち。

彼らは、とても大切だったし、自分が京都の町を、ひいては日本を守護しているのだと言う自負も、もちろんあった。


でも、俺は―――、


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