振り向けば、キス。
「どけろ!今止まったら、もうあかんねん!」
「自覚してんねやったら、尚更退けやお前!」
楓の身体から、匂いたつように溢れているその力を、その身の内に納める術を、楓は知らないのだ。
否、今なら、出来る。それを楓も分かっている。だが、今しか出来ない。もうこれが最終警告だった。
これ以上、『天神』の力に身を任せれば、あの男は倒せるかもしれない。
だが、それは同時に、まだその身に操れない暴力的な力に、楓が飲み込まれてしまうことと同義だった。
―――そうなれば、良くても、楓が壊れる。最悪、心臓も止まってしまう。
そんなことは、させられなかった。
自分自身のためにも、天野のためにも。
そしてなにより、―――楓のために。