振り向けば、キス。

「……楓、」

「離れろ、桜!」



楓に、そんな目をして欲しくはなかった。

でも、自分は、楓にその役割を、望んでもいたんだ。



自分たちに降り注いできた火の粉に、楓と桜は別の方向に飛んだ。

そして、あの男が現れる。


楓が、剣を握りなおしたのが見えた。
そこから、また激しく明るい金が見えた。



もう桜には何もいえなかった。

―――楓は、決めてしまっている、覚悟を。



おそらく、楓の瞳に写っているのは、月姫と自分が幸せに過ごしている光景ではないだろう。
ただただ、月姫ひとりが幸せになってくれればと、そう思っているに違いなかった。

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