振り向けば、キス。
楓は、悔しそうな瞳で朱雀を見つめた後、氷沙に視線を飛ばした。
「氷沙、逃げろ!」
「楓!」
楓の声と、もうひとりの天野、桜の鋭いそれが響いたのは、ほぼ同時だった。
氷沙の出現に驚いて隙を見せた楓を、黒の男は、逃さなかった。
男の手の内から発された、強く荒れる力は氷沙が出現した上空を見上げていた楓のほうへと向かってくる。
はっと、楓が気がついたときにはもう遅かった。
桜が放った、守りの風は寸でのところで届かない。
直撃だけは免れたものの、楓の身体が軽く飛んだ。