振り向けば、キス。
それでも楓は、自分はきっとやるだろうと思う。
例え、氷沙が泣いたとしても、楓はやっぱり氷沙に生きていて欲しいと思うのだ。


氷沙の隣に自分がいて、二人笑い合い、波樹や、水上が傍にいる未来が彼女が一番望むものだと分かっていても、そこに彼女の一番の幸せがあるとしても。


それは、氷沙が生きていなければ、意味が無い。

もう、氷沙が笑っていてくれなかったとしても、生きてさえ居てくれればいいやと思う。
投げやりなわけではなく、きっと氷沙には波樹がいるし、氷沙を守ってくれる男はすぐに現れるだろうとも思う。


氷沙を守れるポジションを分け渡してしまうのは、悔しいけれど。


自分には、力が無かったのだから、仕方が無い。
せめて、自分の力不足の所為で生じてしまったこの事態だけでも、けりをつけなければならない。

それは、楓の意地だった。


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