振り向けば、キス。
遙か下、地上では男と楓が対峙していた。
目を射るような白いオーラと、絶望のふちに突き落とされそうなほどの漆黒のそれ。

氷沙はこのとき、未来を知れない自分を呪った。


楓、楓。
それだけがすべてだった。守りたい。

もう、守られてばかりの自分とは、さようならをしたはずだ。


楓の傍に、い続けるために。
未来なんて、知る能力が無かったとして、それならば、幸せな未来を絶対に作り上げたらいいだけなのだ。


――思いは、必ず力になるよ、月姫。


軽やかな、変声期前の少年のような朱雀の声が、確かに聞こえた。

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