振り向けば、キス。
⑦望んでいたはずの、永遠。
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「なんなんだ、これは……」
世界の破滅。そんな、夢物語のような台詞が波樹の脳裏にちらつくほど、目の前に繰り広げられるのは、惨劇だった。
昼間のはずなのに、太陽は消えてしまっていて、一メートル先も見えないほどの濃霧の中。禍々しいような、気配と、怯える声ばかりが耳につく。
無事な左手だけで、波樹は呪符を構えた。
ここに居たのが、楓だったら、楓はどうしただろう。
楓は冷めている、と言うか現実主義者だ。無理な戦いは、しない。そこに姉が絡んで居なければ、の話だが。
氷沙の安全を最優先するはずだ。そのために生じる他の犠牲には胸は痛めるだろうが、無茶な助けの手は差し伸べない。