振り向けば、キス。
そう尋ねたのは、桜にとって当たり前の判断だった。

けれど、その答えを聞くことが怖いと思う。縛られている、この土地に、この一族に。
それでも、それは必要なのだ。

自身に言い聞かせるように桜は傷ついた腕を押さえた。その下から感じる熱が、今の行動理由であれば良いと思う。


楓と、あの少女が二人で幸せに過ごせる場所など無いのだ。

だったらせめて早いうちに、それ以上傷が広がらないうちに、離してやることが今の自分に出来る最善なのだと思う。


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