振り向けば、キス。
「いや、かまへん。
どうせ、今の楓には何もできひんねん。ただの撒餌にしかならへんってことに、否が応でもきぃつくやろ。
そうしたらきっと、戻ってくる。
それにあの年頃の女の子追い詰めて、心中でもされた方がかなわへんからな」


「……朱雀」


「かえるで、桜。もうこんなとことに用はない」


くるりと、朱雀は楓があの少女を連れて去っていた方向とは真逆の方向へと足を向けた。

そう。『天神』は、強大な力を持つ。それが故に人間の身体にその力を定着させておくことは、とても難しいのだ。
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