振り向けば、キス。
「なんで、楓、あたしを捨てるの。
そんなだったら、あの時、切り捨ててくれた方がよかったよ……」
冷たい風に、かすかな春の日差しが混じり始めた頃。
あたしの世界は音もなく崩れていった。
「天野楓、取り戻しに行くの、手伝ってやろうか?」
現れたのは、見知らぬ男。
銀の髪に、深紅の瞳を持つきれいな造作の顔をもつそいつは、皮肉な笑みを浮かべてあたしに手を差し出した。
「やめろ、氷沙!」