振り向けば、キス。
少しだけ、話題を切り替えてそう尋ねると、


「うん、大丈夫やで。とりつかれて体力使い果たしたみたいやったから、話聞いた後にタクシー呼んだってん」


ほんまにあいつがすべての元凶やな。でもちゃんと面倒見たってえらいやろ?

そんな楓の言い草に、少し説教でもしてやろうかと思ったが、なんだか氷沙は気が抜けてしまって、「ばか」と呟くだけに終わってしまった。


「――楓は、私や波樹がしてること、馬鹿なことだって思ってるかもしれないけど、私はね、人じゃないものに、みんなからは認知されないものに色々なものを奪われ来てしまった人間だから。私と同じような思いをしている人に、差し伸べられる救いの手があるのなら、差し伸べてあげたいって思うんだよ。

それは本当に私の自己満なんじゃないかって思うことも、本当に多いんだけど、それでも、誰かが少しでも救われてほしくて。そう思って、ずっとやってきてて、やりたいんだよ」
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