振り向けば、キス。
 二人の家は遙か昔・首都が遷都されたころから続く由緒正しい神社であり、そこの家系は、霊能力を持ち合わせていたからだ。

 そのことをおおっぴらに吹聴して周ったことはないが、心霊現象に悩まされているという人は案外に多く、ひどづてからひどづてにと言ったように「心霊関係ならここに任せたらいいよ!」な噂が先行してしまっているのだ。
 
 そして、困ったことがあると、とりあえずと言わんばかりに相談してくるものもいるが、中には今の高原のように藁にも縋るかのような思いでやってくるものもいる。

 霊能力があるとは言っても、除霊する能力を氷沙は有していなかった。唯、並外れた強い霊視能力を彼女は持っていた。

 弟である波樹は、この雨宮神社の神主である祖父から退魔法を伝授されていて、弱い幽霊程度なら払うことが出来る力を持っている。

 
 そんな二人は、持ち込まれてくる相談の多さにボランティアのようにして、ただで関わることに疲れてきた頃。有料で心霊現象を解決するというバイトを始めたのだった。

 
 高原は、その噂を聞きつけて雨宮神社にやってきているというわけだ。
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