振り向けば、キス。
「……頼んだぞ、氷沙を守ってやれるのは楓、お前だけなんだからな」

それは、刷り込みにも似ていた。
ずっと、ずっと繰り返されてきた物語を真実だと信じてしまったこどもの心境は、こんな感じなのかもしれない。


軽い、目眩がした。


「――当たり前やわ。じーさんにそんなこと言われんでも、氷沙は俺が守ったる」


それでも、自分は笑えていたと、思う。
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