振り向けば、キス。
―――天野楓。
5年ほど前から、雨宮神社に居候しているこの少年の名前を知らないものは、自分の高校にはいない。いや、この界隈にといっても言い過ぎではないかもしれない。高原の脳裏に、この噂を教えてくれた友人の言葉が蘇る。
『―――大丈夫だって!心理現象なら雨宮双子に任せておいたら。なんてったって、あいつらの後ろにはあの天野先輩がくっついてるんだから』
その言葉に縋るように、高原はここまでやってきたのだ。彼が携わってくれなかったら、どうしよう。
天野楓は、陰陽師だ。
真実かどうか高原には分からないが、少なくともその噂があることは事実で、彼がこの街で発生した心霊現象をいくつも解決してきたということも事実である。