振り向けば、キス。
「くそっ……」

波樹が氷沙を庇うように、壁と自分の身体との間に氷沙を挟んだ。
クラスメイトの圧力がすごいのだろう。波樹の腕が小刻みに震えているのを気付いて、氷沙は波樹の制服のシャツを掴んだ。


「なっちゃん、ごめん。無理しないで」


この状態なら波樹は両手を使えない。
戦うことも、憑き物落としも無理だ。


――どうしよう。何で、楓来てくれないの?

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