振り向けば、キス。

「―――楓!」


その名を口にしたとき、氷沙の視界が涙でぼやけた。

速く、速く来て。

あたしはここにいるのに!


楓が現れてくれないことが不安だった。

もしかしたら、何かあったんじゃないかって。

すがりたくないと思っても、結局自分はすがってしまう。

でも。言い訳かもしれないけど、今の波樹を救ってくれるとしたら、それは楓に他ならなかった。
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