振り向けば、キス。
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「ホント、ごめんね。高原くん。お待たせしちゃって」


「いや、全然。ってか、勝手に押しかけたのは俺の方だし……と、言うか。あの、それで……」


 本当に申し訳なさそうに謝る氷沙に、どうしても高原は集中できなかった。
 
 それと言うのも、氷沙の横に座っている、自分を救ってくれるキーポイントになるはずの人物が気になってしょうがなかったからだ。

 せっかくの綺麗な顔を不機嫌そうにゆがめている、ひとつ上の学校の先輩。いかにもえらそうに腕組みをしているのが、何故か自然に見えてしまう。


「ほんと、すいません。天野先輩。でも、俺必死なんです!どうか助けてください!」


 半ばやけくそ気味に高原は土下座した。
 
 たとえ自分の話しにまったく興味がなかったとしても、協力してもらわなければ。正直、自分の力でどうにかできる範囲を超えている。と高原は思っていた。
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