私を愛憎の檻から連れ出してくれたのはこの地区を束ねる暴走族の総長様でした
「愛莉は将来何になるのかしら?お医者さんとか…弁護士かもしれないわね?」



「いやいや、愛莉はこんなに可愛くて、頭も良くて、運動もできるんだ。社長の奥さんとかじゃないか?」



「きっと、そうねっ!嫁ぐとしたら〜」



私のことが話題になった瞬間ペラペラ話し出す2人にも慣れてしまった。


二人が話している間わたしがする事ははニコニコして、背筋を伸ばして、手をきれいに膝の上で揃えることだけ。




「…おっと、もうこんな時間か。そろそろ家を出ないとな」



「行ってらっしゃい、お父さん。愛莉も早くご飯食べちゃくなさい。」



「はーい。お父さん、行ってらっしゃい。
お仕事頑張ってね。」 



「行ってきます。お母さんも、朝飯美味かったよ」


そう言ってバタンと音を鳴らして扉を閉めお父さんは出ていった。



だからきっとお父さんが知ることはない。
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