【改定版】豚小屋

【第15話】

7月27日の朝8時半頃であった。

ところ変わって、ゆういちろうが勤務している職場の事務所にて…

ゆういちろうは、飯田で暮らしている姉夫婦から『8月5日と6日は実家に帰っておいで…』と言う電話を受けた。

このため、上司に休暇申請を出すために申請書を用意した。

あとは、上司に提出するだけであった。

それからしばらくして、上司が出勤して来た。

ゆういちろうが休暇申請書を出そうとした時であった。

課長が、ものすごく言いにくい表情でゆういちろうに頼み事をした。

「ゆういちろうさん、ちょっとかまへんかな…」
「何なのですか課長!!」
「ああ…大したことじゃないのだよ〜」
「課長!!朝から泣きそうな声で言わないでください!!」
「ああ、ゆういちろうさん…こらえてーな…」
「私は、8月5日と6日は休暇をくださいとお願いするために休暇申請書を出そうとしていたのですよ!!」
「ゆういちろうさん…すまんけど8月5日と6日の予定を空けてくれ〜」
「ふざけるな課長《クソジジイ》!!」
「困ったなぁ…」

課長は、泣きそうな声でゆういちろうに言うた。

「ゆういちろうさん、8月5日と6日だけど、札幌へ行ってくれるかな〜」
「札幌へ行けだと!!」
「ワシは困っているのだよ…会社が飛行機のチケットとホテルの予約を取っているのだよ…」
「だから、札幌へなにしに行くのですか!?」
「8月5日は、取引先の会社の社長さんのオンゾウシとお嫁さんの結婚披露宴があるのだよぅ…本来なら次長が出席する予定だったけど、次長が『イヤだ〜』と言うて拒否したのだよ…」
「なんで次長が結婚披露宴《ひろうえん》に出席することを拒否したのですか!?」
「せやから、次長は8月5日に浜名湖へ出張に行く予定ができたのだよ〜」
「次長が浜名湖へ行く目的は競艇《フネ》でしょ(ボソ…)…次長の頭の中はギャンブルしかないことぐらい分かっていますよ〜」
「そんなひどいこと言わないでくれ〜…次長は来年テーネンをむかえるから…」
「いいわけばかりを言うな!!それだったら課長が行くべきじゃないですか!?」
「だから、8月5日はおいごの結婚披露宴に出席する予定になったのだよ…バイシャク人を務めるご夫婦の親類がキトクになったから代わりに務めてくれと嫁はんから頼まれたのだよ…」
「だから、どうしろと言うのですか!?」
「だから、ゆういちろうさんに頼んでるのだよ…結婚披露宴《ひろうえん》のスピーチの原稿を渡しておくから…原稿とおりに読んでくれたらいいだけだから…代わりに頼む〜」

課長は、女々しい声でゆういちろうに対して言うた。

ゆういちろうは、なげやりな声で『分かりました。要はおめでとうだけ言えばいいのでしょ!?』と返事した。

課長は『おんにきるよ…ありがとう…お礼はきちんとするから…』とゆういちろうに肩をたたきながら言うた後、くちぶえをふきながらたばこを買いに行った。

課長にグロウされたと思い込んだゆういちろうは、このあと過激な行動に出た。

事務所のドアにかぎをかけたゆういちろうは、窓のブラインドを閉めた。

その後、課長が座っているデスクの引き出しにある職場名義のクレジットカードを抜き取ったあとおりたたみのさいふにしまいこんだ。

ゆういちろうは、課長がコレクションで集めていたジッポライターを盗むなどより過激な行動に出た。

その後、ゆうゆういちろうは職場放棄した。

ゆういちろうに任せていたお仕事がストップした。

職場が大混乱におちいった。

職場放棄をしたゆういちろうは、豊田市内《しない》にあるパチンコ店にいた。

ゆういちろうは、閉店時間までパチスロにボットウした。

さて、その一方であった。

ところ変わって、飯田市北方のゆういちろうの姉夫婦が暮らしている家にて…

ゆういちろうの姉は『おとなりさんの家からコーチン(鶏肉)をいただいたので、晩ごはんはコーチン鍋にしましょうね。』とよしえに言うた。

よしえはこの日、パート休みなので家のお手伝いをした。

昼3時過ぎであった。

よしえは、お鍋に入れる具材の買い出しに出かけた。

ところ変わって、JR飯田駅の近くにあるピアゴ(スーパーマーケット)にて…

買い出しを終えたよしえは、レジで並んでいた。

この時、挙母《ころも》の家で暮らしていた時にとなり近所で暮らしていた奧さまがよしえに声をかけた。

「あら、よしえさん。」
「あら、挙母《ころも》で暮らしていた時のおとなりの奧さま。」
「お久しぶりねぇ…いつこっちに移ったの?」
「先週あたりに移りました…今は、ダンナの姉夫婦の家にお世話になっています。」
「そう…それで、挙母《ころも》にいたときに働いていた職場はどうしたの?」
「やめました。」
「やめたの?」
「ええ…経営者がナマケモノだからやめました。」

それを聞いた奥さまは『それだけの理由でやめたの?』と言うたので、よしえはくわしく話した。

「何週間前かおぼえてないけど、経営者が味見をした後に歯形がついた食材をおなべに戻した事件があったのよ…他にも、ねずみが調理用の野菜をかじったあとやおつゆにハエが浮いていたなどを放置していたなど…があったのよ!!…ドサイアクだわ!!」
「そんなことがあったのね…そんなダメ会社はつぶれてトーゼンよ…と言うか、完全につぶれたからもうダメね。」
「えっ?つぶれた?」
「そうよ…ほんとうにつぶれたわよ。」
「それ、いつのことですか?」
「おぼえてないわ…もういいわよ…あのダメ会社がつぶれたからボロクソに言うせてもらうけど…」

この時、ふたりがいる場所から二番目にいる主婦がメモ書きをしていた。

二番目にいる主婦は、女装していた竹宮であった。

竹宮は、聞き耳を立ててよしえと奥さまの会話を聞いた。

「アタシもかつてあのダメ会社のパートで働いていたわよ…その時は、豊田市内《しない》にある別の病院の調理場だったわ…うちはあの社長《クソジジイ》の性格を知っているのよ…あの社長《クソジジイ》は、名古屋の文系の大学の経済学部《フツーカ》の卒業だったかしら…経営学を学んだと言うたけど、勉強なんかそっちのけでサークルとゴーコンばかりしていたのよ…社長のおとーさまも能無しだからなおダメよ…社長の祖父《じいさま》も激甘だからなおダメよ…だから会社がつぶれたのよ。」
「原因は、それだけでしょうか?」
「そうよ…ひらたく言えば、ゴーマン経営でつぶれたのよ…」
「ゴーマン経営…」
「それが原因で悲惨な事件が発生したのよ。」
「悲惨な事件が発生したって?」
「よしえさん、今朝のチュウニチ(中日新聞)の一面《トップ》に悲惨な事件の記事が載っていたわよ。」
「チュウニチの一面《トップ》に記事が載ってたって?」
「うん…昨日の夜9時前だったと思うけど…あのダメ会社が入っていた3階建てのテナントビルが大爆発を起こして崩落したわよ…場所はそうね…めいてつ豊田市駅の裏側にあるビルが密集している地区だったと思う。」
「もしかして、テロ事件が発生したの?」
「そうよ。」

この時、よしえは奧さまから問題の会社が入っているテナントビルで大規模テロ事件が発生したことを聞いてゼックした。

ビルの中にいた社長が、がれきにうもれて亡くなったようだ。

奧さまは、大規模テロ事件が発生したくわしいイキサツをよしえに話した。

「大きな爆発の火元は一階のラーメン屋さんよ…最初はガスが爆発したことが原因だと思ったけど、やくざの男が投げた手榴弾《ばくだん》が爆発したことが原因であることが分かったのよ…爆発した手榴弾《ばくだん》は破壊規模が大きいタイプだったわよ…あのダメ会社は、テナントビルの3階にあったわよ…大規模な崩落は、一階で発生したのより激しい炎がビルの支柱を焼いたのよ…それがが原因で崩落を起こした…ビルの中にいた人たちは全員亡くなったわよ。」
「そんな…」
「火元のラーメン屋さんは、ヤクザの構成員が経営していた店よ…他にも、悪いうわさがたくさんあったと思うけど…とくにあのダメ会社の社長は、もっとも悪いうわさを抱えていたわよ。」
「もしかして…」
「そのもしかしてよ…ここだけの話だけど…あのダメ会社の社長が…ヤクザの親分に用心棒《ケツモチ》を頼んでいたのよ。」
「けっ、用心棒《ケツモチ》…」
「そうよ…ダメ会社の社長のセガレが運転していた(マツダ)RX7が右翼団体《うよく》の宣伝車《クルマ》にあおり(運転)した事件があったのよ…社長は、右翼団体《うよく》と対立している事務所《くみ》の組長《おやぶん》に用心棒《ケツモチ》を頼んだのよ…あのダメ社長は、組長《おやぶん》から貴金属類《キンピン》をたくさんもらうなど…深みにはまったみたいよ…だから会社がつぶれたのよ…」
「そうだったのね…」

よしえの前にいた奧さまは、レジの番が来たのでレジの精算に行った。

前にいた奧さまからえげつない話を聞いたよしえは、背筋が凍りついた。

後ろから2番目にいる竹宮は『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と嗤《わら》いながらちびたというでメモ書きをしていた。

夕方6時頃であった。

ところ変わって、北方にあるゆういちろうの姉夫婦が暮らしている家にて…

家の居間には、よしえとしゅうさくと義姉夫婦がいた。

4人は、コーチン鍋を食べていた。

「しゅうさく…コーチンたくさんあるからいっぱい食べるのだよ。」
「うん。」

義兄は、義姉に言うた。

「ところで、ゆういちろうはどうしているのだ?」
「まだ連絡は来てないけど…」
「困ったなぁ…まあ、そのうち連絡するだろう…もう食べよう…」
「そうね。」

ゆういちろうの姉夫婦は、のんきな表情でコーチン鍋を食べ始めた。
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