【改定版】豚小屋

【第19話】

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)

時は、8月7日の早朝5時半頃であった。

飯田市上柳黒田《しないかみやなぎくろだ》にある無人の豚小屋の敷地内に長野県警《けんけい》のパトカー30台がけたたましいサイレンを鳴らしながら次々と入った。

到着したパトカーの中から捜査員たち90人が降りた。

現場は、緊迫した空気に包まれた。

敷地内にある汚水槽に女性の遺体が沈んでいた。

それから80分後に女性の遺体が汚水槽から引き上げられた。

女性の遺体は、ブルーシートに包まれた状態で捜査車両に載せられた。

その日の昼前であった。

長野県警《けんけい》が記者会見をひらいた。

記者会見の席で、本部長は女性の遺体が激しくソンショウしているので身元が判明するまでにかなりの時間を要すると記者たちに言うたあとすぐに終えた。

会見場にいた複数の報道機関の記者たちは、一斉に怒号をあげた。

その一方で、重朝《しげとも》の職場の新入りの男性従業員さんの婚約者の家族が警察署に捜索願いを提出した。

豚小屋の汚水槽から引き上げられた女性の遺体の身元が行方不明になっている新入りさんの婚約者であるかどうかについては、鑑定の結果が出るまで待つことになった。

遺体の身元が判明するのは、早くても3ヶ月前後になる見込みである。

時は、午後2時過ぎであった。

よしえの義姉夫婦の家の前に長野県警《けんけい》のパトカーがけたたましいサイレンを鳴らしながら往来していた。

この時、よしえは義姉夫婦の家に来るのじゃなかったと思うようになった。

義姉夫婦が暮らしている家に移り住んだ翌日から、家の周りで恐ろしい事件が多発した。

9月からしゅうさくが幼稚園に通う予定になっているが、入園を辞退することを決めた。

次の日の朝であった。

よしえは、しゅうさくが入園する予定だった幼稚園に行った。

よしえは、幼稚園の人に対してしゅうさくの中途入園をやめると伝えた。

その後、よしえは飯田市内《しない》で暮らしている友人に会うためにレストランへ行った。

ところ変わって、飯田市内《しない》にあるレストランにて…

よしえは、飯田《このまち》で暮らすことをやめたあとしゅうさくを連れて名古屋へ移ることを決めた。

よしえは、友人に名古屋へ移りたいのでどうしたらいいのかと相談した。

名古屋へ移住すると決めたよしえは、この日を持ってAコープのパートもやめた。

時は、8月10日の朝9時半頃であった。

この日、最高気温が3日続けて40度以上を超える日々がつづいた。

同時に、不快指数もめちゃめちゃ高かった。

この時、重秀《しげひで》が勝手に職場を休んでいた日がつづいたので問題になった。

あやみは、重秀《しげひで》を連れて工場に行く予定であったが重秀本人《ほんにん》が拒否したのであやみひとりで工場へ行った。

ところ変わって、日南町にあるマヨネーズ工場にて…

あやみは、応接間で工場長さんとお話をした。

工場長さんは、ものすごくあつかましい声であやみに言うた。

「今、うちの工場は段ボールの折り畳みと製品を箱に詰めるお仕事の人手が大きく不足しているのでものすごく困っているのだよ…きのう、従業員さんひとりがやめたのだよ…従業員の引き留めに失敗したので困っているのだよ!!」

あやみは、工場長さんに対して『すみません』と言うた。

工場長さんは、なおもあつかましい声で言うた。

「一体なにが不満なんだ!?」
「えっ?」
「重秀《しげひで》は、うちの会社のどういった部分に不満があるのかと聞いてるのだ!!」
「不満?」
「もしかしたら、結婚できないことに不満があるのか!?」

あやみは、ものすごくつらい表情で言うた。

「そうだと…思います…アタシとダンナが職場恋愛で結婚したことが負い目になっていると思います…」

工場長は、あつかましい声であやみに言うた。

「それだったら、おカネをためたらどうかな…従業員さんたちは、少ないお給料でも貯金しているのだよ…」
「ですが…」
「毎月1万円ずつ貯金すると決めて1万円ずつコツコツと貯めることはできないのか!?」
「毎月1万円ずつでは少なすぎます!!」
「毎月1万円でもコツコツと貯めて行けばあっと言う間に目標金額に届くのだよ…時間がかかってもいいから毎月1万円ずつ貯金しろとあなたが義弟に言うのだよ!!」

工場長さんは、なおもあつかましい声で言うた。

「うちは、これ以上お給料を上げることができないのだよ…この間のテレビで(経済評論家の先生)が経済が上向きになる材料がないと言い切ったので、どうすることもできないのだよ…うちもケーヒセツヤクや資金繰りでヒーヒーと言うてるのだよ…頼むから分かってくれ!!」

分かってくれって…

なにをどう分かれと言うのよ…

あやみは、やる気のない表情でつぶやいた。

工場長さんは、ものすごくあつかましい声であやみに言うた。

「とにかく、月給7万5000円よりあげることはできません…お弁当を注文しておくので、明日から出勤するように義弟さんに伝えてください!!」

社長さんは、ブツブツ言いながら受話器をあげたあとお弁当屋さんに注文の電話をかけた。

「もしもし、休んでいた従業員さんが明日から出勤できるようになりましたので、お弁当を注文します…」

あやみは、ふらついた足取りで事務所から出た。

あやみはぼんやりとした表情を浮かべながら歩き続けたので、自分がどこにいるのか分からなくなった。

そんな時であった。

あやみは挙母町《ころも》にある姉夫婦が暮らしている家の前にやって来た。

この時、家の玄関の前にピンク色の和服姿の女性が大声で叫んでいた。

和服姿の女性のもとに行ったあやみは、事情を聞いた。

「あの~」
「はい。」
「おたくは、どちら様でしょうか?」
「うちは、栄南でナイトクラブを経営しているママです。」
「ナイトクラブのママ?」
「そうよ!!」
「あの~、うちの姉にどのようなご用で来たのですか?」
「姉?…あんたは妹さんよね!!」
「はい。」

ナイトクラブのママは、ものすごく怒った声であやみに言うた。

「ちょっとあんた!!どーしてくれるのよ!!」
「なんで急に怒鳴り声をあげるのですか!?」
「8月5日の深夜にうちの店で働いているホステスがドーハンの男に殴られて大ケガを負ったのよ!!」
「そんなの知らないわよ!!」
「知らないで済むと思ったら大間違いよ!!うちのかわいいホステスを殴った男は、あんたのおねえのダンナよ!!おねえのダンナが犯したあやまちは、義妹であるあんたがつぐなうのよ!!」
「帰りなさいよ!!アタシにも考えがあるから覚悟しておきなさいよ!!」

あやみは、ナイトクラブのママを怒鳴りつけたあとその場から走り去った。

この日を境に、よしえの家とあやみの家は家庭崩壊を起こす危機にひんした。

これより、ドラマはサイアクの局面に突入する。
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