【改定版】豚小屋
豚小屋・3

【第21話】

時は、2017年2月23日の深夜11時50分頃であった。

場所は、静岡市葵区の山奥の地区にある無人の豚小屋の中にて…

「イヤだ!!死にたくない!!」

豚小屋の中でなさけない男の叫び声が響いた。

男は、2016年春頃に東京都内《とない》で芸能活動中に女性タレントさんを刃物で斬《き》りつけて大ケガを負わせた傷害事件を犯した。

殺人未遂罪で逮捕〜起訴されたあと裁判員裁判《さいばん》に至った。

男は、公判中に過激な発言を繰り返したので退廷させられた。

事件は、護送車に乗って拘置所へ帰る途中に発生した。

男が乗っていた護送車が何者かによって襲撃された。

護送車を襲撃した犯人グループの男たち20人は、被告人の男を例の豚小屋に連れ去った。

ところ変わって、豚小屋の中にて…

(ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!)

被告人の男・淵埼光秀《ぶちざきみつひで》(28歳)は、派手なシャツを着ているリーゼントの男たちにかわるがわる殴られた。

男たちは、よりしれつな怒りをこめながら淵埼《ふちざき》を殴りつけた。

「よくもうちの事務所の女《レコ》を傷つけたな!!」
「組長の婚約者をレイプして殺した分もふくめてかたきうちじゃ!!」
「法が許してもオレたちは許さないぞ!!」
「死ねや!!」
「ぶっ殺してやる!!」

この時、ヤキソバヘアで黒のサングラスをかけていてももけた(ボロくなった)ハラマキ姿に地下足袋をはいている竹宮豊国《たけみやとよくに》が近くにいた。

竹宮は、ニヤニヤした表情で淵埼《ふちざき》のぶざまな姿を見つめた。

それから1時間後であった。

(トボーン!!)

ボロボロに傷ついた淵埼《ふちざき》は、小屋内にある汚水曹に沈められた。

2月24日の早朝5時半頃であった。

キンリンの住民から消防対して『豚小屋で、ラッカーのにおいがする…』と言う知らせがあった。

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)

静岡市の中央消防署の科学消防車2台と救助工作車がけたたましいサイレンを鳴らしながら敷地内に入った。

事件現場のキンリンで暮らしている住民たちは、ものすごく心配そうな表情で遠くから現場を見つめていた。

それから2時間後であった。

淵埼《ふちざき》は、消防の救助隊員たちによって引き上げられた。

淵埼《ふちざき》、全身に赤色のラッカーが吹き付けられていた…

引き上げられた時、呼吸困難におちいったなど…危機的な状況に置かれた。

(パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ…)

淵埼《ふちざき》は、静岡市の消防本部のドクターヘリで北安東にある救急病院へ搬送された。

カレは、心拍数が大きな乱れが生じたほか血圧値の最大値が30台に低下していた。

彼は、生死の境をさまよっていた。

そんな中であった。

長野県下伊那郡喬木村《しんしゅうしもいなぐんたかぎそん》から淵埼《ふちざき》の保護観察を引き受けていた直家(76歳)と長女のりつよ(47歳・パート主婦)父娘《おやこ》が救助病院へやって来た。

父娘《おやこ》は、集中治療室のベッドで苦しそうな状態で横たわっていた淵埼《ふちざき》を見てゼックした。

「やだ、おとーさん…」
「なんてこった…」

淵埼《ふちざき》は、いまから数年前に東京でアイドルタレントさんに対するストーカー事件を起こした。

その時、淵埼《ふちざき》はケーサツから警告を受けた。

ケーコクを受けた淵埼《ふちざき》は、迎えに来た直家父娘に対してヒラあやまりの口調で言うた。

『アイドルの追っかけはしません。』
『コンサート会場へ行きません。』

………

淵埼《ふちざき》は、直家父娘に対してそのようにわびたが、またストーカーを繰り返した。

直家は、よりしれつな怒りをこめながらつぶやいた。

淵埼《あのクソバカ》は…

私たちとの約束を反古《ほご》にした。

『アイドルの追っかけをしません。』『ライブ会場へ行きません。』と言うたのはウソだった…

ワシらはだまされた…

淵埼《あのクソバカ》は、1から根性をたたき直さないとだめだ…

淵埼《ふちざき》に最後のチャンスを与えようと思った直家は、喬木村内《そんない》でボクシングジムを経営している知人の男性に助けを求めた。

父娘は、知人の男性を通じて男性の知人の知人のヤクザの顧問弁護士《ベンゴシ》に被害を受けた女性タレントさんと所属事務所の代表の男性との示談交渉《ジダン》を頼んだ。

淵埼《ふちざき》は、治療を理由にシャクホウされた。

しかし、退院後に行く場所がないので喬木村内《そんない》で暮らしている直家の家でゲシュクすることになった。

淵埼《ふちざき》は、事件発生から2ヶ月後に病院で目覚めた。

5月20日に退院した淵埼《ふちざき》は、ボクシングジムを経営している男性と一緒に帰宅した。

5月23日の夜6時半頃であった。

ところ変わって、喬木村両平《そんないりょうひら》にある直家の家にて…

居間の食卓には、直家とりつよとりつよのむこの忠家《ただいえ》(51歳・会社員)とりつよと忠家のふたりの娘・なおみ(20歳・大学生)とさおり(13歳・中2)と淵埼《ふちざき》がいた。

淵埼《ふちざき》は、直家とりつよから強烈な声で怒鳴られた。

「君は危うくところで命を落とすところだった!!明日からは、命が助かったと言うことに感謝をしながら生きなさい!!」
「淵埼《ふちざき》さん、人の言うことを聞きなさい!!『アイドルの追っかけをしません。』『ライブ会場へ行きません。』…と約束したのに、どうして約束を破ったよ!!ケーサツからケーコクを受けたら素直にしたがえばよかったのに、どうしてしたがわなかったの!?」
「淵埼《ふちざき》!!」
「義父《おとう》さま!!やめてください!!」
「あなたはだまりなさい!!」
「淵埼《ふちざき》!!明日からは段ボール工場へ出勤してまじめに働け!!この村にはコンサート会場も、ライフハウスもない…職場と家庭だけしかない場所だから、テメーにはいいクスリだ!!」
「あなたはえらそうに言える身分じゃないのよ!!分かっていたら返事しなさい!!」
「淵埼《ふちざき》!!ごはん食べ終わったら大切な話をする…分かっていたら返事しろ!!」

直家は、より強烈な声で淵埼《ふちざき》を怒鳴り付けた後『メシ!!』と言うた。

この時、淵埼《ふちざき》はハンロンする気力はなかった。

淵埼《ふちざき》は、翌日から村内にある段ボール工場に再就職した。

しかし、来て2日目に職場で暴れた事件を起した。

従業員さん数人に大ケガを負わせた上に、職場の備品を壊した。

これにより、淵埼《ふちざき》は職場をクビになった。

話を聞いた直家父娘は、淵埼《ふちざき》を居間に呼んだ。

直家父娘は、どぎつい声で淵埼《ふちざき》を怒鳴りつけた。

淵埼《ふちざき》は、淡泊眼《たんぱくがん》(きつい目付き)で直家をにらみつけた。

「なによその目つきは!!」

(パチーン!!パチーン!!パチーン!!パチーン!!)

りつよは、よりしれつな怒りをこめながら平手打ちで淵埼《ふちざき》の顔を50回以上叩きまくった。

りつよにしれつな力で顔を叩かれた淵埼《ふちざき》は、赤い血液まじりの涙を流した。

直家は、より恐ろしい表情で淵埼《ふちざき》を怒鳴りつけた。

「淵埼《クソバカ》!!キンシンしろ!!私がよしと言うまでは土蔵にいろ!!淵埼《クソバカ》!!甘ったれるな!!」

直家は、淵埼《ふちざき》をより強烈な力でボロボロに傷つくまで殴りつけた後、庭の土蔵に閉じ込めた。

土蔵に閉じ込められた淵埼《ふちざき》は、あきらめ顔を浮かべていた。

それから2週間後であった。

直家父娘は、淵埼《ふちざき》のキンリンを解くタイミングをずるずると先延ばしにした。

それが原因で、直家父娘は恐ろしい事件に巻き込まれた。

これより、第三の悲劇の幕があがった。
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