【改定版】豚小屋

【第25話】

7月22日の朝7時過ぎであった。

場所は、家の居間の食卓にて…

この日は通信制大学のスクリーングとレポート提出日であったが、すでにやめたの関係なかった。

それなのにりつよは、なおみに対して『今日は大学へ行く日ね…お友だちに会えるね…』とやさしく言うた。

思い切りブチ切れたなおみは『バイトだから行けない!!』と言うてりつよをどなりつけた。

その後、家から出た。

なおみに怒鳴られたりつよは、小首を傾《かし》げながら『大学でイヤなことがあったのかなぁ?』とつぶやいた。

この時、忠家はゴルフバッグを持って朝早くに家から出た…

さおりも、朝早くに家を出てどこかへ行った…

…ので、食卓にいなかった。

なおみが家を出てから2分後であった。

直家は、不安げな声でりつよに言うた。

「りつよ。」
「なあに?」
「なおみはどうしたのだ?」
「えっ?」
「お前、なおみにいらんことでも言うたのか?」
「言うてないわよぉ…」
「りつよ!!お前もこの最近生活態度が悪いぞ!!」
「おとーさん!!アタシは『今日は大学へ行く日ね…』と言うただけよ!!」

直家は、のみかけのお茶を一気にのみほしたあと怒った声でりつよに言うた。

「なおみが大学をやめたのはほんとうなのか?」
「なおみが大学をやめたって…」
「りつよは、知らなかったのか?」
「知らなかったわよ〜」
「そうか…もういい…と言うよりも、ワシがなおみにアレコレと求め過ぎたのがよくなかった…今の世の中は、どんなにいい大学を卒業しても一流企業に就職できる保証はまったくないのだよ…そう考えると、なおみに学歴なんかネコに小判だよ…結婚して家庭に入った方が100パーセント幸せになれる…相手は、弁護士か国家公務員《コームイン》か個人経営者の跡取り息子だけにする!!それでなおみの人生はバラ色だ!!」
「おとーさん…」
「ワシが知人の夫婦に仲人のお世話をお願いしに行く…それでいいだろ…」
「分かったわ。」

りつよは、力ない声で直家の意見を受け入れると言うた。

この日、りつよは体調不良でパートを休んだ。

ところ変わって、名古屋栄の中心部にある地下街にて…

忠家《ただいえ》は、家族に大ウソをついて家から出たあと高速バスに乗って名古屋にやって来た。

サカエチカの待ち合わせの目印の銅像がある場所にて…

「忠家《ただいえ》。」
「ちかこ…」

忠家《ただいえ》は、大きく手をふって女を呼んだ。

女は、栄南のナイトクラブのホステス・ちかこだった。

ちかこと再会した忠家《ただいえ》は、ちかこと抱きあってキスした。

「忠家《ただいえ》…ちかこ…さびしかった。」
「オレも…ちかこに会いたかった…」
「うれしい…」
「ちかこ。」
「忠家《ただいえ》。」

再会を喜びあったふたりは、地下街デートに行った。

ところ変わって、高羽町にあるセブンイレブンにて…

大学をやめたなおみは、バイトだけに専念した。

この最近、若い従業員さんたちによるワガママが原因でなおみに負担がかかっていた。

なおみが新しく来たお弁当を陳列ケースに並べる作業をしていた時だった。

店長さんがもうしわけない表情でなおみのもとにやって来た。

「なおみさん。」
「なによ!!」

さおりは、ものすごくとげとげしい声で店長さんに言うた。

店長さんはものすごく困った表情でなおみに言うた。

「なおみさんはこのままでええんかなぁ。」
「店長!!アタシは思い切りキレているのよ!!『遊びに行くから今日は休ませてください。』と言うて休んだ若い従業員さん(18歳・高校生)を始末してよ!!」
「始末しろって…」
「せやから、あやまるから…ごめんなさい…あやまったよ。」

(バシッ!!)

思い切りブチ切れたなおみは、怒りをこめながら賞味期限切れのお弁当を投げつけた。

なおみは、怒った声で言うた。

「あんた!!今の言葉は何よ!!ごめんなさい…あやまったよって…ふざけるな!!」
「なおみさん…」
「アタシ!!働きながら学ぶことがイヤだから大学やめたのよ!!」
「なんでやめるんねん…せっかく入れた大学なのに…」
「やかましい!!せっかく入れた大学がいかんのよ!!」
「ほな、どうするんぞぉ~」
「知らないわよ!!もう怒ったわよ!!」

(ガーン!!)

思い切りブチ切れたなおみは、空のキャリーで店長さんの頭を殴りつけた。

この日、なおみは調子が悪いので早退けした。

それから1時間後であった。

なおみは、JR飯田駅へ向かって歩いていた。

ちょうどその時であった。

竹宮がなおみのもとへやって来た。

竹宮は、なおみに会うなり淵埼《ふちざき》のことをシツヨウに聞いた。

「あんた、淵埼《ふちざき》のことをホンマに知らんのか!?」
「知らないわよ!!同じことを何度も聞かないでよ!!」
「あっそうかい…ほなもうええわ。」

この時であった。

りつよが、フラフラとした足取りでコンビニの近辺を歩いていた。

この時りつよは、竹宮となおみが話し込んでいた現場を目撃した。

りつよは、より激しい恐怖に襲われた。

もしかしたら…

竹宮がうちの近辺にやって来るかもしれない…

たいへんだ…

危険を察知したりつよは、大急ぎで逃げ出した。

ところ変わって、コンビニから700メートル先にある公園のトイレの個室にて…

洋式便器に腰かけたりつよは、スカートの中に手を入れてショーツを下ろした。

その後、ほおづえつきながら考え事をした。

時は、夕方6時頃であった。

ところ変わって、南知多道路の古布インターの付近の県道沿いのラブホにて…

全裸《はだか》の忠家《ただいえ》とちかこは、ベッドの上で激しく求め合った。

「ああ…忠家《ただいえ》…忠家《ただいえ》…忠家《ただいえ》…」
「ちかこ…ちかこ…ちかこ…」
「ああ…あああああああああああああ!!」
「ちかこ!!ちかこ!!」
「イヤァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァ!!」

さて、その頃であった。

ところ変わって、直家の家族たちが暮らしている家にて…

家の居間には、直家とりつよがいた。

直家は、りつよに対して決心したと言うたあとこの家をバイキャクすることを伝えた。

「りつよ。」
「おとーさん。」
「この家をバイキャクすることにした。」
「バイキャクするって?」
「この村を出て、県外《よそ》へ移ることにした。」
「どこへ移るのよ?」
「枇杷島《びわじま》だよ。」
「枇杷島《びわじま》。」 
「今日昼前…叔父《おじ》が脳いっ血で倒れて…キトクになった。」
「枇杷島《びわじま》の叔父《おじ》さまがキトクになったって…」
「ああ…家にあとつぎがいないのだよ…それで、叔父《おじ》が暮らしている家の名義を変更する形で引っ越しをすることにした。」
「家族たちはどうするのよ?」
「叔父《おじ》は、生涯独身だったから家族なんかいないよ。」
「そう…分かったわ。」
「それと同時に、なおみに縁談《ハナシ》を入れた。」
「縁談《ハナシ》を入れた…」
「縁談《ハナシ》…」
「叔父《おじ》が抱えている借金をセイサンするためのお見合いだよ。」
「そう…」
「大須で酒問屋を営んでいるの知人に仲人を頼んだ。」
「分かったわ…それで、さおりの中学はどうするの?」
「枇杷島《びわじま》のこども病院の中にある院内学級に転校させる…」
「分かったわ。」

これで話し合いがまとまった。

7月23日から直家りつよ父娘は引っ越しの準備などに追われた。

それから1ヶ月後の8月24日に、引っ越しの準備が完了した。

一家は、枇杷島にある亡叔父《オジキ》が暮らしていた家に引っ越しした。

これを機に、家族はもう一度0からやり直すと訣意《けつい》した。

それから1ヶ月の間、家族はおだやかに暮らしていた。

しかし、恐ろしい悲劇はまだつづいた。

9月の終わり頃であった。

おだやかに暮らしていた直家一家に再び恐ろしい悲劇が襲いかかった。
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