【改定版】豚小屋
【第3話】
ひろつぐは、6月24日に春日井ネオポリス(工業団地)内にある大手自動車メーカーの純正部品製造工場に再就職した。
ひろつぐは、保護観察士の男性から口やかましく言われた。
『行き帰りは職場の送迎バスに乗って行くこと…』
『職場と家庭の間だけを往復すること…』
『勤務時間内に与えられた仕事をすること…』
『お給料は全額家に入れなさい…』
『お昼は、職場で出された食事だけを食べること…』
『上の人の言うことを聞いて素直に返事する…』
『分からないことがあれば教えてもらいなさい…』
『執行猶予期間は、亡くなられた母子を弔いなさい…』
『お休みの日は、ご遺族の家のお仏壇にお線香をあげに行きなさい…』
ひろつぐは『オレに何を求めているのだよぉ…』と気だるい表情を浮かべていた。
保護観察士の男性は、ひろつぐに立ち直りの機会を与えるためにアレコレと口やかましく言うた。
今のひろつぐは、素直な心でご遺族のみなさまに謝罪する気持ちはあるのだろうか?
……………
1日目は、なれない仕事でもどうにかがんばることができた。
だが、ひろつぐは6月26日頃に職場放棄した。
ひろつぐは、上の人から言われた言葉に対して腹を立てたようだ。
ひろつぐは、保護観察士の男性とヤクソクしたことをきれいに忘れたようだ。
時は、朝8時55分頃であった。
ところ変わって、名古屋市東区出来町にあるひろつぐの父親が経営している縫製工場にて…
工場の従業員さんたちの朝礼の時であった。
現場主任の男性が毎年夏に支給していたボーナスが今年は出ないかもしれませんと従業員さんたちに伝えた。
それを聞いた従業員さんたちは、ラクタンした表情を浮かべた。
副主任の男性が『いつも通りに仕事をしてください…』と言うて従業員さんたちをなだめたので、大きな混乱は回避できた。
ひろつぐの父親は、ものすごくもうしわけない表情で事務所へ戻った。
ところ変わって、事務所にて…
ひろつぐの父親がデスクについた時であった。
この時、女性事務員さんがものすごい血相でひろつぐの父親のもとにやって来た。
女性事務員さんは、ひろつぐの父親に1枚の書面を突きつけながら怒鳴り声をあげた。
「ちょっとあんた!!」
「なんだよぉ…」
「朝から泣きそうな声で言わないでください!!」
「どうしたのだよぉ…」
「あんたこの頃生活態度が悪いみたいね!!『公私混同をしないように…』とか『社会の常識をまもりたまえ…』とえらそうに言うてなによ!!」
「なにをひとりで怒ってるのだよ〜」
「ふざけるなクソジジイ!!」
思い切りブチ切れた女性事務員さんは、近くにあったかたいものを手に取ったあとデスクの近くに置かれていた花瓶にぶつかった。
(ガシャーン!!)
花瓶は、こなごなに割れた。
ひろつぐの父親は、泣きそうな声で言うた。
「ああ!!その花瓶は最高級のイマリヤキだぞ…」
「やかましいクソジジイ!!」
女性事務員さんは、ひろつぐの父親に対して一枚の書面をひろつぐの父親にたたきつけた。
ひろつぐの父親は、キョトンとした表情『この書面は?』と言うた。
女性事務員さんは、ものすごく怒った声でひろつぐの父親を怒鳴りつけた。
「警告書よ!!」
「警告書?」
「信用金庫《しんきん》からの警告書よ!!」
「信用金庫《しんきん》から?」
「そうよ!!」
ひろつぐの父親は、キョトンとした表情でつぶやいた。
なんで信用金庫《しんきん》から警告書が来たのだ?
分からない…
女性事務員さんは、よりしれつな怒りを込めながらひろつぐの父親を怒鳴りつけた。
「あんた!!」
「はい?」
「書面を見なさい!!」
信用金庫《しんきん》からの警告書は、次の通りであった。
今から8ヶ月ほど前であったが、ひろつぐの父親は信用金庫《しんきん》から受け取った5000万円の約束手形の決済をしていなかった。
ひろつぐの父親は、信用金庫《しんきん》に対して『原資がないので待ってくれ〜』と言うてあわれみを乞うた。
このため、2ヶ月の猶予期間を与えられた。
しかし、2ヶ月の猶予期間の間に原資を用意することができなかった。
警告書は、最後に『あと30日以内に返済しない場合は刑事告訴に踏み切ります…』と記載されていた。
ぼんやりとした表情を浮かべているひろつぐの父親は、気だるい声言うた。
「書面の内容が分からない…」
「コラ!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
「あんたはだめね!!」
「だから、ワシにどんな落ち度があると言うのだよ〜」
「落ち度があるから警告書が届いたのよ!!」
「だからどうしろと言うのだ?」
「5000万円を信用金庫《しんきん》に払うかサイバンザタになるかのどちらかよ!!」
「サイバン…」
「あんたのせがれは、横浜で殺人事件を起こしたよね…シッコウユウヨの判決が出たので、あんたのせがれはヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラ…と嗤《わら》っていた…せがれがクソバカならあんたもクソバカよ!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
「それともう一つ、先週労働基準監督署からも警告書が届いたとことをお伝えします!!」
「わかった…もういい…しんどいよぉ…しんどいよぉ…」
(ブルルルルルルルルルルルルルルルルルル…)
この時であった。
事務員のデスクの上に置かれているビジネスホン(昭和60年製)の呼び出し音が鳴った。
事務員さんは、電話に出る前に音声通話モードにセットした。
その後、電話に出た。
「はい!!多川縫製!!」
スピーカーから不気味な男の声が聞こえた。
不気味な男は、言うまでもなく竹宮だった。
「こちら多川縫製さまでございますね〜」
「音声通話にしていますが…」
「ちょうどよかった…多川のクソジジイに伝えておくことがあるさかいに…」
「なんでしょうか?」
「多川のクソジジイは…コバヤシファイナンスから約3億のカネを借りてる…それだけじゃあらへん…他にも複数のカネカシから借り入れた分がぎょーさんある…その分を含めて総額は70億円と聞いたぞ!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
ひろつぐの父親は、ひどくおびえまくった。
スピーカーから竹宮の声が響いた。
「おい、さっきなさけない声をあげたのは多川のクソジジイだな…どないするんや?…カネ返すのか返さんのか!?…返さないのであれば、じいさんが大事にしているものを一つずつ壊すぞ!!…それと、じいさんのせがれがオレの女《レコ》をひき逃げで殺した分の代償《オトシマエ》も耳そろえて払えよ!!…ほな…」
(ガチャ…ツーツーツーツー…)
ひろつぐの父親は、足早に事務所から飛び出た。
ひろつぐの父親が信金から受け取っていた5000万円の約束手形は、従業員さんたちのボーナスを払う目的で使う予定であった。
この時、高校時代の友人につかまった。
友人がひろつぐの父親にあわれみを乞うたので、そのお金を貸した。
ひろつぐの父親は、友人から約束手形を取り返すために白川公園に行った。
ところ変わって、白川公園にて…
ひろつぐの父親は、友人に約束手形を返してほしいと頼んだ。
しかし、友人がひろつぐの父親に対して『待ってくれ…』と言うたので、大ゲンカになった。
「おい!!5000万円の約束手形を返せ!!」
「多川…許してくれ…あと2日で原資が用意できるから…」
「ふざけるなクソガキ!!」
「多川…オレは困ってるのだよぉ…」
「ふざけるなクソガキ!!ぶっ殺すぞ!!人から5000万円を借りておいて、1円も返さないのであれば考えがあるぞ!!」
「わかってくれ…借りたものは返さなければならないことはよくわかってるよぉ…」
「ふざけるな!!オレに首を吊れと言いたいのか!?」
「そんなことは言うてないよぉ…多川にメイワクをかけたことは詫びるよぉ…ホンマにこの通り…」
「ダメだ!!今すぐに用意しろ!!」
「待ってくれぇ〜」
「おい、お前の上のせがれはもうすぐきれいなお嫁さんをもらうみたいだな〜」
「そうだよ…8月の(旧暦の)七夕に当たる日に挙式披露宴をあげるのだよ〜」
「それじゃあ、せがれの嫁に払ってもらおうか…お前のせがれのきれいな嫁を岐阜の人妻ソープにぶち込むぞ!!」
「やめてくれ〜」
「ふざけるな!!」
(ガーン!!)
ひろつぐの父親は、右足で友人の顔をけとばした。
ひろつぐの父親は、地面に倒れた友人に殴るけるの暴行をくわえた。
この時、公園の木陰でひろつぐが聞き耳を立てて聞いた。
ことの次第を聞いたひろつぐの怒りがより激しく強まった。
そしてその日の深夜11時半頃に恐ろしい悲劇が発生した。
ところ変わって、めいてつ犬山駅の北北西にある木曽川の河川敷の公園にて…
「イヤァァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァ!!」
(ビリビリビリビリビリビリ!!ブチッ!!)
河川敷の草むらで、帰宅中の女子高生が黒のジャンパー姿で恐ろしい覆面をかぶった男に連れて行かれた。
カノジョは、男に倒されたあと着ていた制服のブラウスを刃渡りのするどいナイフで切られた。
その後、ブラジャーをナイフで切られた。
覆面の男は、カノジョが着ていたスカートとショーツを脱がした。
カノジョは、男にボロボロに傷つくまで犯されたあとナイフでズタズタに斬《き》られて殺された。
それから6時間後であった。
ところ変わって、岐阜県《ぎふ》との県境付近の農村地帯にある養豚小屋にて…
養豚農家の主人は、いつものように養豚《ぶた》たちにエサを与えていた。
その時であった。
奥にいる豚たちがより不安定な鳴き声をあげていた。
それを聞いた主人は、大急ぎでかけて行った。
すると…
刃渡りのするどいナイフでズタズタに斬《き》りさかれて殺された女子高生の遺体が横たわっていた。
遺体を目撃した主人は、叫び声をあげた。
「たいへんだ!!ケーサツ!!ケーサツ!!」
(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー!!)
早朝6時過ぎであった。
事件現場の養豚小屋《ぶたごや》の敷地に愛知県警《けんけい》のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らしながら次々と到着した。
現場の小屋には、愛知県警《けんけい》の捜査1課の刑事たちと鑑識警察官たちがあわただしく往来した。
容疑者の身元は割り出すためのショウコがどこにもない…
愛知県警《けんけい》の捜査1課の刑事たちのイライラが高まった。
その中であった。
パトカー1台が敷地に到着した。
到着したパトカーの後ろのドアがあいたあと女子高生の父親が飛び出た。
女子高生の父親は、こともあろうにひろつぐの父親から金を借りていた友人だった。
この時、ブルーシートにくるまれた娘の遺体が運び出された。
女子高生の父親は、強烈な泣き声をあげた。
この時、事件現場の死角の部分に竹宮が隠れていた。
竹宮は『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と嗤《わら》いながらちびたえんぴつでメモ書きをしていた。
さて、その頃であった。
ところ変わって、覚王山にあるひろつぐの実家にて…
家の居間の食卓には、ひろつぐの母親とあずさとひであきとほのかがいた。
4人は、ひとことも言わずに朝ごはんを食べていた。
ひろつぐの父親とふさえとふさこは、朝ごはんを食べずに家から出たので食卓にいなかった。
あずさは、ものすごく心配な表情であたりをみわたした。
ひろつぐは、職場放棄をしたあと行方不明になった。
そんな中であった。
春日井ネオポリスにある工場から電話がかかって来た。
母親が電話に出た。
「もしもし…ひろつぐはまだ帰っていませんけど…昨日…工場で何があったのですか?…すみません…今日1日だけ休ませてください…よろしくお願いします。」
母親は、受話器を置いたあと大きくため息をついた。
近くで聞いていたあずさは、ものすごくもうしわけない表情を浮かべた。
ひろつぐの学資保険と将来のために貯めていた貯金を全部解約して、ひでのりの家族の幸せのために使われたことがわだかまっていた。
あずさは、ますますもうしわけない表情でひろつぐの母親に言うた。
「おばさま…」
「あずささん。」
「あの~…」
「どうしたの?」
「おばさま…アタシたち…ひろつぐさんにもうしわけないことをしたと思っているので…」
「まだそんなことを気にしていたの!?」
ひろつぐの母親は、イラついた声であずさに言うた。
「あずささんの気持ちはよくわかるけど…おばさんは、あずささんたちの家族が幸せに暮らしていたらそれで十分と言うたのよ!!」
「それだけで十分とは思っていません!!」
「あずささん!!おじさまとおばさまは、あずささんたちの家族が幸せに暮らしていたらそれでいいのよ!!あれは、私たち気持ちよと言うたのよ!!」
「おばさま!!」
「あずささん!!もうすぐひであきとほのかの幼稚園のお迎えのバスが来るわよ!!早く用意しなさい!!」
ひろつぐの母親からより強烈な声で言われたあずさは、気持ちがイシュクした。
この時、幼稚園バスのお迎えの時間が来ていたがひであきとほのかは幼稚園を休んだ。
ひであきとほのかは、楽しく幼稚園に行ける状態ではなかった。
その次の日も、ひであきとほのかは幼稚園を休んだ。
ひろつぐは、保護観察士の男性から口やかましく言われた。
『行き帰りは職場の送迎バスに乗って行くこと…』
『職場と家庭の間だけを往復すること…』
『勤務時間内に与えられた仕事をすること…』
『お給料は全額家に入れなさい…』
『お昼は、職場で出された食事だけを食べること…』
『上の人の言うことを聞いて素直に返事する…』
『分からないことがあれば教えてもらいなさい…』
『執行猶予期間は、亡くなられた母子を弔いなさい…』
『お休みの日は、ご遺族の家のお仏壇にお線香をあげに行きなさい…』
ひろつぐは『オレに何を求めているのだよぉ…』と気だるい表情を浮かべていた。
保護観察士の男性は、ひろつぐに立ち直りの機会を与えるためにアレコレと口やかましく言うた。
今のひろつぐは、素直な心でご遺族のみなさまに謝罪する気持ちはあるのだろうか?
……………
1日目は、なれない仕事でもどうにかがんばることができた。
だが、ひろつぐは6月26日頃に職場放棄した。
ひろつぐは、上の人から言われた言葉に対して腹を立てたようだ。
ひろつぐは、保護観察士の男性とヤクソクしたことをきれいに忘れたようだ。
時は、朝8時55分頃であった。
ところ変わって、名古屋市東区出来町にあるひろつぐの父親が経営している縫製工場にて…
工場の従業員さんたちの朝礼の時であった。
現場主任の男性が毎年夏に支給していたボーナスが今年は出ないかもしれませんと従業員さんたちに伝えた。
それを聞いた従業員さんたちは、ラクタンした表情を浮かべた。
副主任の男性が『いつも通りに仕事をしてください…』と言うて従業員さんたちをなだめたので、大きな混乱は回避できた。
ひろつぐの父親は、ものすごくもうしわけない表情で事務所へ戻った。
ところ変わって、事務所にて…
ひろつぐの父親がデスクについた時であった。
この時、女性事務員さんがものすごい血相でひろつぐの父親のもとにやって来た。
女性事務員さんは、ひろつぐの父親に1枚の書面を突きつけながら怒鳴り声をあげた。
「ちょっとあんた!!」
「なんだよぉ…」
「朝から泣きそうな声で言わないでください!!」
「どうしたのだよぉ…」
「あんたこの頃生活態度が悪いみたいね!!『公私混同をしないように…』とか『社会の常識をまもりたまえ…』とえらそうに言うてなによ!!」
「なにをひとりで怒ってるのだよ〜」
「ふざけるなクソジジイ!!」
思い切りブチ切れた女性事務員さんは、近くにあったかたいものを手に取ったあとデスクの近くに置かれていた花瓶にぶつかった。
(ガシャーン!!)
花瓶は、こなごなに割れた。
ひろつぐの父親は、泣きそうな声で言うた。
「ああ!!その花瓶は最高級のイマリヤキだぞ…」
「やかましいクソジジイ!!」
女性事務員さんは、ひろつぐの父親に対して一枚の書面をひろつぐの父親にたたきつけた。
ひろつぐの父親は、キョトンとした表情『この書面は?』と言うた。
女性事務員さんは、ものすごく怒った声でひろつぐの父親を怒鳴りつけた。
「警告書よ!!」
「警告書?」
「信用金庫《しんきん》からの警告書よ!!」
「信用金庫《しんきん》から?」
「そうよ!!」
ひろつぐの父親は、キョトンとした表情でつぶやいた。
なんで信用金庫《しんきん》から警告書が来たのだ?
分からない…
女性事務員さんは、よりしれつな怒りを込めながらひろつぐの父親を怒鳴りつけた。
「あんた!!」
「はい?」
「書面を見なさい!!」
信用金庫《しんきん》からの警告書は、次の通りであった。
今から8ヶ月ほど前であったが、ひろつぐの父親は信用金庫《しんきん》から受け取った5000万円の約束手形の決済をしていなかった。
ひろつぐの父親は、信用金庫《しんきん》に対して『原資がないので待ってくれ〜』と言うてあわれみを乞うた。
このため、2ヶ月の猶予期間を与えられた。
しかし、2ヶ月の猶予期間の間に原資を用意することができなかった。
警告書は、最後に『あと30日以内に返済しない場合は刑事告訴に踏み切ります…』と記載されていた。
ぼんやりとした表情を浮かべているひろつぐの父親は、気だるい声言うた。
「書面の内容が分からない…」
「コラ!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
「あんたはだめね!!」
「だから、ワシにどんな落ち度があると言うのだよ〜」
「落ち度があるから警告書が届いたのよ!!」
「だからどうしろと言うのだ?」
「5000万円を信用金庫《しんきん》に払うかサイバンザタになるかのどちらかよ!!」
「サイバン…」
「あんたのせがれは、横浜で殺人事件を起こしたよね…シッコウユウヨの判決が出たので、あんたのせがれはヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラ…と嗤《わら》っていた…せがれがクソバカならあんたもクソバカよ!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
「それともう一つ、先週労働基準監督署からも警告書が届いたとことをお伝えします!!」
「わかった…もういい…しんどいよぉ…しんどいよぉ…」
(ブルルルルルルルルルルルルルルルルルル…)
この時であった。
事務員のデスクの上に置かれているビジネスホン(昭和60年製)の呼び出し音が鳴った。
事務員さんは、電話に出る前に音声通話モードにセットした。
その後、電話に出た。
「はい!!多川縫製!!」
スピーカーから不気味な男の声が聞こえた。
不気味な男は、言うまでもなく竹宮だった。
「こちら多川縫製さまでございますね〜」
「音声通話にしていますが…」
「ちょうどよかった…多川のクソジジイに伝えておくことがあるさかいに…」
「なんでしょうか?」
「多川のクソジジイは…コバヤシファイナンスから約3億のカネを借りてる…それだけじゃあらへん…他にも複数のカネカシから借り入れた分がぎょーさんある…その分を含めて総額は70億円と聞いたぞ!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
ひろつぐの父親は、ひどくおびえまくった。
スピーカーから竹宮の声が響いた。
「おい、さっきなさけない声をあげたのは多川のクソジジイだな…どないするんや?…カネ返すのか返さんのか!?…返さないのであれば、じいさんが大事にしているものを一つずつ壊すぞ!!…それと、じいさんのせがれがオレの女《レコ》をひき逃げで殺した分の代償《オトシマエ》も耳そろえて払えよ!!…ほな…」
(ガチャ…ツーツーツーツー…)
ひろつぐの父親は、足早に事務所から飛び出た。
ひろつぐの父親が信金から受け取っていた5000万円の約束手形は、従業員さんたちのボーナスを払う目的で使う予定であった。
この時、高校時代の友人につかまった。
友人がひろつぐの父親にあわれみを乞うたので、そのお金を貸した。
ひろつぐの父親は、友人から約束手形を取り返すために白川公園に行った。
ところ変わって、白川公園にて…
ひろつぐの父親は、友人に約束手形を返してほしいと頼んだ。
しかし、友人がひろつぐの父親に対して『待ってくれ…』と言うたので、大ゲンカになった。
「おい!!5000万円の約束手形を返せ!!」
「多川…許してくれ…あと2日で原資が用意できるから…」
「ふざけるなクソガキ!!」
「多川…オレは困ってるのだよぉ…」
「ふざけるなクソガキ!!ぶっ殺すぞ!!人から5000万円を借りておいて、1円も返さないのであれば考えがあるぞ!!」
「わかってくれ…借りたものは返さなければならないことはよくわかってるよぉ…」
「ふざけるな!!オレに首を吊れと言いたいのか!?」
「そんなことは言うてないよぉ…多川にメイワクをかけたことは詫びるよぉ…ホンマにこの通り…」
「ダメだ!!今すぐに用意しろ!!」
「待ってくれぇ〜」
「おい、お前の上のせがれはもうすぐきれいなお嫁さんをもらうみたいだな〜」
「そうだよ…8月の(旧暦の)七夕に当たる日に挙式披露宴をあげるのだよ〜」
「それじゃあ、せがれの嫁に払ってもらおうか…お前のせがれのきれいな嫁を岐阜の人妻ソープにぶち込むぞ!!」
「やめてくれ〜」
「ふざけるな!!」
(ガーン!!)
ひろつぐの父親は、右足で友人の顔をけとばした。
ひろつぐの父親は、地面に倒れた友人に殴るけるの暴行をくわえた。
この時、公園の木陰でひろつぐが聞き耳を立てて聞いた。
ことの次第を聞いたひろつぐの怒りがより激しく強まった。
そしてその日の深夜11時半頃に恐ろしい悲劇が発生した。
ところ変わって、めいてつ犬山駅の北北西にある木曽川の河川敷の公園にて…
「イヤァァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァ!!」
(ビリビリビリビリビリビリ!!ブチッ!!)
河川敷の草むらで、帰宅中の女子高生が黒のジャンパー姿で恐ろしい覆面をかぶった男に連れて行かれた。
カノジョは、男に倒されたあと着ていた制服のブラウスを刃渡りのするどいナイフで切られた。
その後、ブラジャーをナイフで切られた。
覆面の男は、カノジョが着ていたスカートとショーツを脱がした。
カノジョは、男にボロボロに傷つくまで犯されたあとナイフでズタズタに斬《き》られて殺された。
それから6時間後であった。
ところ変わって、岐阜県《ぎふ》との県境付近の農村地帯にある養豚小屋にて…
養豚農家の主人は、いつものように養豚《ぶた》たちにエサを与えていた。
その時であった。
奥にいる豚たちがより不安定な鳴き声をあげていた。
それを聞いた主人は、大急ぎでかけて行った。
すると…
刃渡りのするどいナイフでズタズタに斬《き》りさかれて殺された女子高生の遺体が横たわっていた。
遺体を目撃した主人は、叫び声をあげた。
「たいへんだ!!ケーサツ!!ケーサツ!!」
(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー!!)
早朝6時過ぎであった。
事件現場の養豚小屋《ぶたごや》の敷地に愛知県警《けんけい》のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らしながら次々と到着した。
現場の小屋には、愛知県警《けんけい》の捜査1課の刑事たちと鑑識警察官たちがあわただしく往来した。
容疑者の身元は割り出すためのショウコがどこにもない…
愛知県警《けんけい》の捜査1課の刑事たちのイライラが高まった。
その中であった。
パトカー1台が敷地に到着した。
到着したパトカーの後ろのドアがあいたあと女子高生の父親が飛び出た。
女子高生の父親は、こともあろうにひろつぐの父親から金を借りていた友人だった。
この時、ブルーシートにくるまれた娘の遺体が運び出された。
女子高生の父親は、強烈な泣き声をあげた。
この時、事件現場の死角の部分に竹宮が隠れていた。
竹宮は『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と嗤《わら》いながらちびたえんぴつでメモ書きをしていた。
さて、その頃であった。
ところ変わって、覚王山にあるひろつぐの実家にて…
家の居間の食卓には、ひろつぐの母親とあずさとひであきとほのかがいた。
4人は、ひとことも言わずに朝ごはんを食べていた。
ひろつぐの父親とふさえとふさこは、朝ごはんを食べずに家から出たので食卓にいなかった。
あずさは、ものすごく心配な表情であたりをみわたした。
ひろつぐは、職場放棄をしたあと行方不明になった。
そんな中であった。
春日井ネオポリスにある工場から電話がかかって来た。
母親が電話に出た。
「もしもし…ひろつぐはまだ帰っていませんけど…昨日…工場で何があったのですか?…すみません…今日1日だけ休ませてください…よろしくお願いします。」
母親は、受話器を置いたあと大きくため息をついた。
近くで聞いていたあずさは、ものすごくもうしわけない表情を浮かべた。
ひろつぐの学資保険と将来のために貯めていた貯金を全部解約して、ひでのりの家族の幸せのために使われたことがわだかまっていた。
あずさは、ますますもうしわけない表情でひろつぐの母親に言うた。
「おばさま…」
「あずささん。」
「あの~…」
「どうしたの?」
「おばさま…アタシたち…ひろつぐさんにもうしわけないことをしたと思っているので…」
「まだそんなことを気にしていたの!?」
ひろつぐの母親は、イラついた声であずさに言うた。
「あずささんの気持ちはよくわかるけど…おばさんは、あずささんたちの家族が幸せに暮らしていたらそれで十分と言うたのよ!!」
「それだけで十分とは思っていません!!」
「あずささん!!おじさまとおばさまは、あずささんたちの家族が幸せに暮らしていたらそれでいいのよ!!あれは、私たち気持ちよと言うたのよ!!」
「おばさま!!」
「あずささん!!もうすぐひであきとほのかの幼稚園のお迎えのバスが来るわよ!!早く用意しなさい!!」
ひろつぐの母親からより強烈な声で言われたあずさは、気持ちがイシュクした。
この時、幼稚園バスのお迎えの時間が来ていたがひであきとほのかは幼稚園を休んだ。
ひであきとほのかは、楽しく幼稚園に行ける状態ではなかった。
その次の日も、ひであきとほのかは幼稚園を休んだ。