ほんの少し思い浮かべただけの未来
目を閉じて、天井を仰いだ。
私が新人だった頃、園田先輩はどうだった? 私にどんな仕事をくれていたっけ……
そこまで考えて、園田先輩が私のOJTをしてくれていた当時の業務メモを読んでみよう、と思いついた。
大切に(でもないけれど)保管している使用済みノートの束から、表紙の日付が最も古いものを取り出そうと、屈んで引き出しに手をかけた──
ギッ!
たった今退出したはずの隣の席から、椅子が沈み込む音が聞こえてきた。
斎藤くんが戻ってきた? もしかして忘れもの? だとしても、わざわざ椅子に座るものかな……
お目当てのノートを発掘して上半身を起こすと、自然と椅子に座っている人物が視界に入ってきた。
こちらから『どうしたの?』と訊くより早く、向こうから話しかけてきた。
「よっ。今日はまだ残業する?」
そこに座っていたのは、同期の上林リョウタだった。
私は第一設計部、リョウタは隣の第二設計部所属だ。入社依頼ずっと同じフロアで働いてきた。
「そこまで緊急の案件でもないからキリがいいところで帰るつもり」
「なら、飯行かない?」
『ああ、彼もか』と直感した。
彼の顔を見ただけで把握できてしまった。そのすっきりした表情を見るのは本日2度目だ。
私はそれでも『いいね』と答えた。