異世界獣人の国で介護施設を始めます!

「レーニン様、今日はとても良い日ですね」

「ふふふっ……本当にね。心まで温かくなるわ」

「レーニン様は何かやりたいことなどはありますか?」

「そうねー?恋がしたいわね」

「はぁ?」

 コイ?

 濃い?

 鯉?

 恋?

 ど……どのコイ?

「あの……レーニン様?」

「ふふふっ……でも、もう恋はしないの」

 手を合わせて微笑むレーニン様は、何だか少女の様な顔をしている。

 可愛いなー。

 なんて思っていると、レーニン様の口からとんでもない言葉が飛び出した。

「でもねエンちゃん、最後は愛より金よ」

 おおぉぉーーっと、そうきたか。

 元聖女とは言えど、聖女様だった人がそんな事を言っても良いのだろうか……?

 レーニン様!過去に一体何があったんですか!っと突っ込みたくなったが、けしてそれは口にしない。認知症特有の、辻褄の合わなさと、独特生な間。

 過去の事を思い出して話しているのか、それとも物語やお芝居を思い出しているのか?

 ふふふっと笑うレーニン様が幸せそうなのでエンはそっと聞き流す。

 何だかほっこりする日だな。

 エンはレーニン様と視線を合わせるため、東屋へと行き椅子に腰を下ろした。

「エンちゃんは恋している?」

 今日のレーニン様は乙女モードなのかな?

 それとも恋バナがしたいのかな?

 レーニン様がキラキラの瞳をこちらに向けてくるので、私はコクリと頷いた。

「まあまあまあ、お相手はどなた?私の好きな人でないと良いのだけど……もし、同じ人ならライバルね」

「レーニン様がライバルになるのは嫌ですね。絶対に勝ち目無いですもん」

「あら……そんな事を言っていると、本当に取ってしまうわよ。ガツガツ行きなさい。ガツガツよ」

「ガツガツですか?」

 うーーん。と唸っていると、ガツガツという言葉に影響されてしまったのか、レーニン様が「今日はとんかつかしら」と話がいつのまにか変わってしまっていた。

 ガツガツ……とんかつ……。

 ああ……そういうことか。

 ガツガツの言葉に引っ張られてしまったのね。て言うか異世界にもとんかつがあるんだな。なんて思っていると、もう恋の話は忘れてしまったようで、レーニン様はとんかつの話をしながら子供のように笑っていた。

 料理人のクリスさんに頼んで今日はとんかつにしてもらおう。



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