異世界獣人の国で介護施設を始めます!
二人目はアライグマ獣人のおばあちゃんでサラネさん。サラネさんは放っておくと、いつまでも皿洗いや洗濯物を洗い続けてしまう。
「今日も綺麗に綺麗。ほらこんなにきれい」
キュッキュッとお皿を洗いながら嬉しそうに笑っている。サラネさんは洗っているだけなので大人しいのだが、どんなに疲れても洗い物を止めないため注意が必要だ。休憩を挟みながら、洗い物を楽しんでもらっている。
三人目はフクロウ獣人のおじいちゃんでモレイユさん。モレイユさんはフクロウなのに夜目が利かず、夜になると目が見えなくなってしまう。だというのにフクロウは夜行性のため、夜になるとフラフラ何処かに徘徊しようとする。
「夜がきたぞ。私の時間だ。おっとこんな所に壁が!」
ドンッと大きな音を立てて、壁にぶつかったり、段差でつまづいたりと、夜目が利かないため怪我が絶えない。
デクスター先生に睡眠薬を処方してもらわないとダメかしら?
そんな獣人さん達が加わり、私は今日も忙しく施設を運営している。施設を開業してから、沢山の獣人さん達が認知症に対する理解を深めてくれている。そんな獣人達が増えてきた裏には、レオの存在が大きい。以前からレオは王や、重鎮達、それに医師や学者といった多方面に、認知症について説明をして回ってくれてはいたのだが、その中でも賢者と言われているラングノテスさんが認知症にかなり興味を持ち、更に認知症は病気であり、処刑対象にはならないと論じてくれた。そのおかげで、更に認知症は病気だと認識してくれる獣人さん達が増えてきたのだ。
それでも、認知症などとウソを言うな!悪魔付きは処刑対象だ!という声も多く講演会を開いても、途中で揶揄が飛び話が進まなくなってしまうこともあるんだとか……。
新しいことを取り入れるときには、どんな人でも、どんな国でも、難色を示すのは当たり前だ。未知の領域に踏み入れるには勇気がいることなのだ。レオの手を借りて私はゆっくりでいい、一日一人で良いから認知症への認識を変えていきたい。そう思っている。
そしてレーニン様……ううん。お母さん、あなたの様に一人でも多くの獣人さん達を助けたいです。
「エン、王都に新たに作る施設についてなのだが良いか?」
「はい。大丈夫ですよ」
レオが私に一枚の紙を差し出した。それは新しい施設の設計図だった。
そう!
そうなんです!
なんと、王都の街に介護施設が建つことになったんです。王都には私達のいる王城の内にある施設に次いで、二店舗目の施設です。
「もう設計図が出来たんですか?わーっ凄く良い施設が出来そうですね」
「そうだな。後は良い働き手が雇えると良いのだが、そっちがなかなか……な」
認知症に対して理解し、働いてくれる人はまだまだ少ない。認知症の介護をしようとしている者に対し、差別的な目を向けてくる獣人も多くいる。