異世界獣人の国で介護施設を始めます!
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私は新施設からの報告書に目を通していた。この報告書を見る限り問題は無いように見えるが、少し気になることがあった。カルパさんとメアリーさんからの手紙の回数が少なくなってきていたのだ。二人が新施設へ移って始めてもらった手紙は、とても分厚くて読むのが大変だったのに、最近の手紙は一枚の紙に数行の文字のみ、文字数まで減ってきている。
毎日楽しく働く様子が分かる手紙だったと言うのに、最近の手紙はまるで定期報告書の様だった。これでは新施設の施設長が送ってくる報告書と変わらない。
ふうっ……息を短く吐き出すと、あることを決意し、レオの元に向かった。
「レオ、お願いがあるの」
「ん?どうした?」
「新施設への視察に行きたいんですけど……ダメ……かな?」
「それは俺も考えていたんだが、俺としては新施設よりもエンの身の方が大切なんだが……」
分かってくれるかと言わんばかりに、レオが眉根を下げる。
「でも……何だか嫌な予感がするの……」
「そうは言ってもだな……」
「お願い、レオ!」
祈るように手を合わせながらウルウルと瞳を潤ませると、レオの喉がグッと鳴った。
「時間をくれ、何とかしてみる」
「ホント!レオ、大好き!」
私はそう言うと、執務室を飛び出した。すると後ろから私の名を呼ぶレオの叫び声が聞こえてきた。
どうしたのだろうとは思ったが、私にはやることがある。
さあ、忙しくなるぞ。
私が廊下を早足で歩いていたその頃、執務室ではレオが呆然としていた。
「ホント!レオ、大好き!」
エンが俺の事を大好きと言ってくれた。それが嬉しくて両手を広げてエンがこの腕の中へと飛び込んでくるのを待った。しかしエンはクルリと体を反転させると、颯爽と部屋から飛び出して行った。俺は広げたままの両手をどうすることも出来ずに固まった。
「エンーーーー!!」
俺は空しさからエンの名前を叫ぶ。
それを見ていた側近やメイド達が、不敬にならない程度の哀れみの目を向けてきた。
俺は広げたままの両手を顔に持っていくと、天を仰いだ。
エン……。
最近俺への扱いが雑ではないか……。