異世界獣人の国で介護施設を始めます!


 馬車に揺られること30分、新施設へと到着した。エンはレオにエスコートされながら外へと出ると、爽やかな風が通り過ぎた。ここは王都と言っても中心街では無く、中心街から少し離れた場所あり、静かで落ち着いた場所だった。新施設の前ではカルパさんとメアリーさんが私達を出迎えるために待っていてくれた。

「カルパさん、メアリーさん!」

 私は二人の名前を呼びながら、久しぶりに会う二人の前に駆け出した。

「エン様、お久しぶりです」

「エン様……お久しぶり……です」

 笑顔の再会と思っていたのだが、何故か二人は緊張した様子で、顔や体を強ばらせていた。

 一体どうしたのだろうか?

 笑ってはいるが、目は笑っていないし、弧を描いた口角がヒクついている。その様子にレオも気づいたようだが、気づかない振りをしているようだ。私も何も気づかない振りをして、ニコリと挨拶を返した。

「お久し振りです。二人とも元気そうで良かったわ。最近は手紙の方がなかなか届かないので心配をしていたんですよ」

「「…………」」

 二人が無言でこちらを見つめている。

 やはり何かあるのだろう。

 それを見たレオも、二人に話しかけた。

「カルパ、メアリー頑張っているようだな。施設長の方からいつも報告を受けているぞ」

 そう言いながらレオが施設長へと視線を向けた。すると施設長は両手をもみながら、人当たりの良さそうな顔を浮かべながらこちらへとやって来た。

 新施設の施設長はパンダ獣人さんで、名前はパグテノさんと言うそうだ。コロンとした見た目でとても可愛らしく、人を魅了する力がありそうに見える。パグテノ施設長はレオ達とは違い、ほぼパンダの姿……獣人と言うより、パンダがそのまま二足歩行して喋っている……。まるで着ぐるみが喋っているような感じだ。どうしてパグテノさんはこのような姿なのだろうか?それについてレオに後で聞いた話によると、時々先祖返りと言って、先祖の血が濃く出てしまう獣人がいるらしい。先祖返りの獣人は、パグテノさんの様に獣の姿を頼濃く受け継いでしまい、このような姿なのだという。

 なるほど、そういうこともあるんだな。

 それにしても可愛い。ポシェットとかが似合いそうだな……なんて思いながら想像すると、顔がにやけそうになるがそれを表情や言葉には出さない。これもティエナから教えられた淑女の振る舞いというやつでる。ティエナがこちらを見てコクリと頷いている。

 淑女の振る舞が上手く出来たのだろう。

 良かった。




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