異世界獣人の国で介護施設を始めます!
防犯カメラと変わらないそれには、虐待の証拠がバッチリと記録され、利用者さんの腕を強く掴み、壁に叩き付ける音までもが鮮明に記録されていた。
ドン!
ドン!
体を壁に叩き付けられる鈍い音。
「助けて!やめて!」
泣き叫ぶ利用者さんの声。
顔などの見える部分はさけ、服で隠れる部分を殴り傷を付けていく陰湿さ。
何てことを……。
「あははは、私は伯爵家の生まれで、ここの施設長だぞ。私に逆らうな、お前達もよく見ておけ」
そう言ってスタッフ達を無理矢理に従わせている。
伯爵家の生まれ?
だから?
一体なんのプライド?
利用者さんを虐待し終えたあいつは、「あははは……」と高笑いをして見せた。
それから一言。
「どうせすぐに忘れるだろう」
確かに認知症だからすぐに忘れてしまうだろう。
だがそう言うことでは無い。
例え認知症だと言っても、傷つくし心の何処かで覚えているんだよ。どんなに忘れてしまうと言っても、その時に受けた傷は脳の奥底に刻み込まれる。
現にエルラさんは触れようとしただけで怯えた。
辛い思いをしたことは、覚えているんだよ。
こんなことをしたあいつを私は絶対に許さない。