異世界獣人の国で介護施設を始めます!

「ヒィィーー!!どうか命だけは!!」

 命乞いをするパグテノに向かって、レオが声を張り上げた。

「なぜ分からない。虐待は罪だ。悪事に手を染めた愚か者、罪を受け入れる覚悟も無いくせに悪事に手を染めるな。断罪される未来を考えていなかったのか!馬鹿者が!」

 レオはそう言い終えると、持っていた剣を振り降ろし、パグテノの片耳を切り落とした。獣人にとって片耳を切り落とされることは、大罪を犯した証となる。一生後ろ指をさされながら生きていくこととなるだろう。

 パグテノは床に落ちた自分の耳を唖然と見つめ、ゆっくりとそれを手に取り、悲鳴を上げた。

「あ゛ぁぁぁーーーー!耳があぁぁぁーーーー!私の耳があぁぁぁ……レオンポルド殿下、どうしてこのようなことを……私はこの施設のために尽くしてきたというのに!このようなまねをして、我がグレイス伯爵家が黙っていませんぞ!」

 パグテノは自分が貴族で、家が黙っていないと目を血走らせている。

 貴族だから何だというのか?

 虐待をし、横領という罪まで重ね、罪を犯したくせに……パグテノはその罪を償わなければいけない。それはどんな地位にいる貴族だろうと変わらない。だというのに、パグテノは未だに自分の罪を認めようとしない。

「レオンポルド殿下、どうか我がグレイス家に免じて、ここは穏便にすませて頂けないでしょうか?」

 レオがグルル……と息を吐き出すと、ズンッと更に空気が重くなった。レオから本日一番の威圧が放たれ、冷気に満ちた部屋が圧迫される。

「貴様はまだ分からないのだな。貴族だ?だからなんだ。陳腐なプライドをひけらかし、スタッフや老人達を苦しめたというのに。俺達獣人はプライドが高い。それは誇り高き獣の血がそうさせるからだ。そのプライドをこのような卑怯な手で汚すな。恥を知れ!」

 レオはもう一度剣を振り上げると、もう片方の耳も切り落とした。

「あ゛ぁぁぁーーーー!そんなあぁぁぁーーーー。私の耳があぁぁぁーー!」

 泣き叫ぶパグテノを騎士が拘束し、施設から連れ出されて行くのを私達は冷たい表情で見送った。



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