異世界獣人の国で介護施設を始めます!
「エンあの時は守ってやれなくて、すまなかった」
「あの時……?」
あの時とは、どの時の事だろうか?
レオが何を言っているのか分からず、キョトンとしていると、レオの顔が悲しそうに歪んだ。
「パグテノが手を上げたとき、エンを守ることが出来なかった」
ああ……あの時か、エルラさんを守るためにパグテノの前に飛び出し、頬を打たれた。あの時のことを言っているのだろう。あの後すぐにレオは私に謝ってきた。しかしそれはレオのせいでは無いと何度も行ったのに……まだ気に病んでいたのか。今日カルパさんとメアリーさんが尋ねてきたから、あの日の事を思い出してしまったのだろう。
「気にしなくても良いのに……」
あの日打たれた方の頬を、レオが大きな手で包み込んできた。
「守ると言っておきながらこんな失態……本当にすまない」
「レオは何を言っているの?レオは守ってくれたじゃない。私や利用者様、スタッフの皆をレオは守ってくれたよ。あの時のレオはすっごく格好良かった。『虐待は罪だ。プライドをこのようなことで使うな、恥を知れ!』って凄く格好良かった」
「…………」
レオは照れているのか、無言のまま慌てた様子で口元を覆って顔を逸らした。
くすくす可愛い。
顔を逸らして表情を隠しても、嬉しそうに耳がピョコピョコと動いている。
パグテノに頬を打たれたのは私にも責任がある。だって自分から飛び出したんだもん。そんなに気に病むことは無いのに。
私はレオに感謝している。感謝しても仕切れないほどの恩がある。