異世界獣人の国で介護施設を始めます!
「分かっているんです。私にはこんなに可愛い服は似合いません」
「エン様にとてもお似合いです」
「ティエナさん。そんな顔で言われても、悲しくなるだけですよ」
涙目になりながら、無表情なティエナさんに、もの申すと「ああ……」と言いながらポンと手を叩いた。
「エン様、言うのが遅くなりましたが、わたくし表情筋がほぼ動かないのです。何故ですかね。努力はしているのですが、顔の筋肉が動かないんですよ。これが通常ですので、特に怒っているわけでもありません。これでも興奮しているのです」
「ええ!興奮ですか?」
「そうです。エン様のお世話をさせていたでける名誉に、昨日は眠れませんでした。さあ、こちらに来て下さい。御髪を整えます」
椅子に座るように促され、鏡の前に腰を下ろした。するとクシを手にしたティエナが私の髪にクシを通していく。そしてサイドにクシを通し始めると、その手がピタリと止まった。
「ティエナさん?」
「あっ……っ……えっと……申し訳ありません。お耳が……」
「ああ……この世界に人間はいないんですかね?えっと……私って珍獣ですかね?」
私がそう言いながら心なくハハハッと笑うと、ティエナさんが無表情なままズイッと前に出てきた。
「まさか珍獣などと……人間は伝説と言われる生き物で、神に近い存在です!」
「はぁ?神?まさか!普通の人間ですよ。神では無いです」
「では天使様ですか?」