異世界獣人の国で介護施設を始めます!
「いや、いや、いや、それも違いますから!至って普通で平凡な生き物で、そんな風に拝まれるよな存在ではないですよ」
ティエナさんは無表情なまま、手を合わせ神に祈りを捧げるような格好をしている。無表情さとポーズがちぐはぐでシュールだな……と、一歩引きながらそんな事を思っていると、我に返ったのかティエナさんが咳払いをした。そんなティエナに向かってエンは声を掛けた。
「ティエナさん、分かって頂けましたか?普通の人間です」
「はい。エン様が尊いお方だと言うことはしか、分かりませんでした」
「だから違うんだってば!」
そんなやり取りとしていると、ティエナさんの頬が赤くなっている気がした。
それに今一瞬だけど口角が上がったような……?
見間違え?
表情筋が動かないって自分で言ってたし。
「ささ、その美しい耳がよく見えるように髪をまとめましょう」
そう言ってティエナさんが手慣れた様子で髪をまとめていく。
「わーーっ、ティエナさんは器用なんですね。こんなに綺麗に髪をまとめて頂いて、ありがとうございます」
「いえ、エン様。わたくしごときに敬語はいりませんし、ティエナとお呼び下さい」
「えっと……でも……」
「ティエナでお願いします」
ズイッと無表情で迫られると怖い。
何だろう、凄い圧が……。
ティエナさんの圧に押し負ける形でエンはコクリと頷いた。