異世界獣人の国で介護施設を始めます!

「ローラ様、お初にお目に掛かります。私はこの施設の責任者で、エンと申します。よろしくお願いします」

「わたくしはローラ・フレアと申します。お世話になりますわ」

 とてもしっかりとした返事が返ってきた。何だか認知症とは思えない感じだけど……。

「ローラ様、今後はこちらの風呂で過ごして頂くことになりますが、どうですか?何か不都合などはありますか?」

「大丈夫よ。結構広くて快適ね」

 これまた普通の返事が返ってくる。

 認知症と言っても、軽い症状のようだ。

 簡単に挨拶を交わし、エンがローラ様から離れて少し経った頃だった。

「「キャーー!」」

 ララ、リリの悲鳴が風呂場に響き渡り、エンの耳まで届いた。

 一体、何事?

 エンは急いで風呂場へと向かう。するとそこにはずぶ濡れのララ、リリの姿と、グッタリとしたローラ様の姿があった。

「ララ、リリ何があったの?」

 エンはローラ様を風呂から引きずり上げながら、二人に声をかけた。

「それが……ローラ様がお風呂で溺れてしまって」

「えぇ?人魚がお風呂で溺れるの?」

「「はい……」」

 ああ……そう言うことか……。

 泳ぎを忘れてしまった、元人魚姫……これは、溺れないように工夫が必要ね。顎に手を立ててどうしようかと考えていたとき、またしても悲鳴が聞こえてきた。

 今度は何?!

「「キャーー!」」

 これはルル、レレの悲鳴?

 えっと、この悲鳴は外から?




< 57 / 141 >

この作品をシェア

pagetop