異世界獣人の国で介護施設を始めます!

 *

 現在私は、王様の前で(ひざまず)いていた。

 王への謁見というやつてある。

 この城に一時でも住まわせて頂くための挨拶なのだが、物々しいったらありゃしない。謁見の間にいる貴族達の鋭い視線が突き刺さる。あいつは誰だ?なぜ王の前にいる?王子との関係は?こちらを物色し、警戒している者や、いやらしい視線を向ける者もいる。それに今の私の格好は何なのだろうか?王城の部屋に入るなり、侍女が数名やって来て、嫌がる私の身体を磨き上げ、ドレスに着替えさせられた。しかもドレスは聖女様が着るような真っ白な手触りの良いシルクのような布に、金糸の刺繍が施されている物だった。この刺繍が、物凄く細かくて、素晴らしいったら……。この世界に刺繍の出来るミシンなんて物は存在していない様なので、これは全部手縫いだろう。これだけの物だ。きっと値段も相当な物だろう。絶対に汚さないようにしなければ……。清楚で美しいドレスを着た私は、王の前で王の言葉を待った。王の許しを得るまでは、声を発することも、顔を上げることは出来ないと教えられていたので、ジッとその時を待った。シンと静まり返る謁見の間に、男性の良く通る声が響いた。

「そなたがエンか?顔を上げよ」




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