異世界獣人の国で介護施設を始めます!

 殿下が思いっきり碧眼王子を睨みつけ、グルル……と威嚇するような声を出している。そんな殿下の姿を見ていた王妃様がコロコロと鈴を転がすよう声で笑い出した。

「ふふふっ……レオンポルド、そんな風に睨まないの。まったくあなたは、そうやって誰にでも威嚇するのを止めなさい」

 王妃様……実の母親に叱られても、威嚇を止めない殿下に、私はそっと近づき頭を撫でた。すると殿下は、今までの態度がウソのように、のどをゴロゴロと鳴らして甘えてきた。

 ふふふっ、可愛い。

 私はここが謁見の間だと言うことも忘れて、殿下の頭を撫でた。耳が嬉しそうにピコピコと動いているため、何のためらいもなくその耳に触れる。

 すると、それを見ていた貴族がざわめきだした。ヒソヒソとこちらに聞こえない程度の声で、話をしている。

 それを見て、私は殿下の頭から手を離した。

 しまった!

 やってしまった。

 目の前のモフモフに抗えなかった。

 だらだらと背中に冷たい汗を流していると、殿下はそんな私の様子を気にも留めず、私の腰を引き寄せてきた。ゴロゴロと喉を鳴らし、私にすり寄りながら甘えてくる。

 殿下のその様子を見た王と王妃が、驚愕の表情を見せた。回りで見ていた獣人達も同じような顔をしている。シンと静まり返る謁見室で、最初に我に返ったのは王だった。




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