異世界獣人の国で介護施設を始めます!
「レ……レオンポルド、普段人を寄せ付けないお前がいつからそんな感じに……。いや、それはいい。ところでエン殿、そなたが人間だというのは本当か?」
きた……絶対この質問はされると思っていた。
王からの突き刺さるような視線……威圧され圧迫される空気。今ここでウソはつけないとそう思ったエンは、ゆっくりと酸素を肺にに取り込み、しっかりとした口調で答えた。
「はい。私は人間です」
私の答えに、シンと静まっていた謁見の間にざわめきが広がる。今日ここにいるのは、王城で働く貴族のみで、王に絶対の忠誠を誓う者達だけだという。そのため、ここで私が人間だと暴露しても大丈夫なんだと殿下が言っていた。それでも、この訝しむ 視線が辛い。私を王族をだます詐欺師や、悪女だとでも思っている視線だ。証拠でも見せろと言った様子の獣人達の目に見えるよう、私は両サイドの黒い髪を耳にかけた。私の耳を見た獣人達から息を呑む音が聞こえてくる。玉座に座っていた王も同じように息を呑んでいようだ。そんな獣人達を尻目に、私は殿下に視線を向けた。殿下は優しく微笑みながら私を見ている。その瞳が大丈夫だと言っているのが分かって、ホッと息を吐き出した。
そんな私達を見ていた王が、謁見の間全体に声を響かせた。
「人間はこの世界では伝説の生き物。この世界の奇跡。神の加護を持つ神の導きて」
神の導きてって……私にそんな力は無いよー!
これ絶対、神の言葉を待っているんだろうな。
私を介して、神の言葉が聞けるとか思っているよね。