異世界獣人の国で介護施設を始めます!
「イーニアス殿下、それは命令ですか?」
「いや、これは命令では無い」
「そうですか。では、そのお話、お断りいたします」
「ほう……王太子であるこの私の話を断るか?」
「はい。命令でないのなら、辞退させて頂きます。イーニアス殿下の元には行けません。申しわけございません」
私ははっきりと断りと、詫びを入れて頭を下げた。そんな私を見ていたイーニアス殿下の碧眼がギラリと光る。
「ふーん。気に入ったよエン」
イーニアス殿下が右手を私の耳に向かって伸ばしてきた。それを見ていたレオンポルド殿下が、イーニアス殿下の手を払いのけた。
「エンに触れるな!」
このレオンポルド殿下の態度に、イーニアス殿下が怒りを露わにするのではと思ったが、それは稀有に終わった。手を払いのけられたイーニアス殿下は、宙にある手を見つめて口角を上げた。
「くっ……くくくっ……レオンポルド、お前そこまで……そうか……。分かった。エンのことは今は諦めるよ」
「今は?今は、って何だ?!」
イーニアス殿下は声を荒げるレオンポルド殿下を見ながら含み笑いを浮かべると、機嫌良さそうにその場を去って行った。