異世界獣人の国で介護施設を始めます!
*
その日の夜――。
私はバルコニーにあった椅子に背を預け、綺麗な星空を眺めていた。ネオンの光が無いこの世界の星は本当に綺麗。本当に手が届きそうだし、まるで星が降ってくるのではないかと手を伸ばす。
「綺麗……宝石みたい」
美しい星に魅了され、乙女チックな気分にどっぷり浸っていると、柔らかい風が髪をさらった。さほど強い風では無かったが、風にさらわれた髪を片手で押さえる。エンは風の吹き抜ける方とは逆の方向へと視線を向けると、そこに大きな影を見つける。
あれは?
ちょうど月が雲に隠れ、大きな影がなんなのかは確認出来ない。
目を細めてそれを凝視していると、雲が切れ月が顔を出した。ゆっくりと影が月の光を浴びながら色を染めていく。
あれは……。
エンの瞳に映るのは月明かりに照らされ、神々しく夜空を仰ぐ金色の獅子の姿だった。
獅子のあまりの美しさにエンは息を呑んだ。
なんて美しい生き物だろう。
獅子はゆっくりと私を見ると、地面を蹴りバルコニーに降り立った。
一蹴りでここまで……。
自分より大きな獅子が目の前にいるというのに、不思議と危機感や恐怖は感じなかった。殿下の様な可愛らしいライオンでは無い。雄々しく美しい金獅子。
「あなたは誰?」