異世界獣人の国で介護施設を始めます!
「手でも動かせるが、こっちの方が便利だろう?」
「ガンスさん!最高です!天才、天才すぎます」
「そうだろう。そうだろう。もっと褒めて良いぞ!」
ガンスさんが、またガハハハッと笑い出した。
「エン、ガンスが調子に乗る。それ以上褒めなくていい」
「何を言う。俺は褒められて伸びるんだ」
そんな二人のやり取りを聞きながら、私は魔道具の出来にほくそ笑んだ。
これで利用者さん達の生活が楽に出来るはずだ。
私は何度もガンスさんにお礼を言って、鍛冶屋を後にした。
その日の夜、私の部屋へとレオが尋ねてきた。
「レオ?どうかしましたか?」
「魔道具……介護用品が出来たから、エンは屋敷にすぐ帰ってしまうだろう?」
「そうですね」
何の迷いも無くそう告げると、レオの耳と尻尾がダラリと力なく下を向いた。
あらら……。
寂しいのかな?
それとも悲しい?
レオの空色の瞳が潤んでいる様子に、エンはプッと吹き出してしまう。
「ふふふっ。レオは可愛いですね」
笑いながらそう言うと、レオが私の手を取った。
「俺は、可愛いだけでは無いぞ」
ジッと見つめられ、真剣な表情を見せるレオ。先ほどまでの潤んだ瞳は何処へ?と思うような熱のこもった瞳を向けられ、胸の奥が熱くなる。
ダメ!
ダメ、ダメ、ダメ、ダメ!
この人はこの国の王子様で、身分の違いは明らか。
この世界で人間が珍しい存在だと言っても、きっと迷惑をかけてしまう。そんな事になるくらいなら、この気持ちに蓋をしよう。気づいてしまったこの気持ちの名前は言葉にせず、胸の奥にしまい込む。
私は自分の気持ちに蓋をした状態で、レオの頭を子供をあやすように撫でた。
「よしよし、良い子」
こうしてレオを子供扱いすることで、自分の気持ちを封印した。