異世界獣人の国で介護施設を始めます!
*
エンは暗い部屋の一室で目を覚ました。
ここは?
あの時、薬を嗅がされて意識を失って……。
はっ……ティエナは?
顔を左右に動かすと、ティエナがすぐ近くで横になっていることが分かった。胸が前後に動いている事から、眠っているだけなのだろう。良かったとひとまず胸を撫で下ろすが、これから起こりえる事を想像して体が震えた。
私はどうなってしまうのだろうか?
殺されることは無いだろうが、無理矢理にあんなことや、そんな事をされるかもしれない……。
ダメダメ、悪いことばかり想像してばかりではなく、一発逆転を狙わなくちゃ。
大丈夫、なんとかなる……いや、なんとかしてみせる。
私はゆっくりと立ち上がろうとして、手足が縛られていることに気づく。
ああ……手足が縛られていて、上手く動かせない。
モゾモゾと体を動かし、腹筋を使って起き上がった。何とか座ることが出来たが、ここからどうすれば良いだろう。そんな事を考えていると、部屋に誰かが入って来た。
「おう、ようやく起きたみたいだな。人間」
そう声を掛けてきたのは、悪党面の無骨でがさつそうな男だった。ザッ悪党と言った感じの男の姿に少しだけホッとした。何故なら、こういった男なら、きっと目的はお金だと思ったからだ。交渉の余地はある。
ただのお金目的であってほしい。
私はそう願いを込めつつ、相手を威嚇するように睨みつけた。
「あなたの目的は何ですか?」
「そりゃ、金だな。人間なんて珍しい動物、売り飛ばせば一攫千金だぜ」
嬉しそうに笑う男。
やはりお金が目的か。