異世界獣人の国で介護施設を始めます!
しかしこの人達は、誘拐をしてしまうほど切羽詰まっていたのだろう。村の悲惨な状況を知ってしまえば、協力したくもなる。
だってね。
根っからの悪人では無いんだよ。
眉を寄せて、悲しそうな顔をしながら私を見るんだよ。
村のため、村のためって……辛そうな顔をするこの人達を救いたいと思ってしまった。
私はもう手足を縛られてはいない。
ノクスさん達と運命を共にする仲間、そう認知されたようだ。
外に出て、私は騎士団を待ち受ける。
先ほどまで曇天だった空だったが、少しずつ雲が薄くなり、青空が見えだした時だった。雲の隙間から太陽の光が降り注ぎ、放射線状に光が差す。その景色は美しく神がかっていた。これから起こる状況を神が見守っているかのようだな、なんて思った。
大丈夫、きっとなんとかなる。
ううん……そうじゃない。
私がなんとかしてみせる。
そう覚悟を決め、両手に力を込める。
そのとき……。
獣の咆哮が轟いた。
その声は森の空気を震わせ、大地に伸展した。
「エン様、到着されたようですよ」
ティエナの言葉に私はコクリと頷いた。