この執着がやがて愛になる
「っ、食べながら泣かんといてや」

 伏見が彼方の様子に気づき、気まずそうに言う。しかし彼方は涙を流しながらも食べる手を休めない。泣きながらも食事をする彼方に伏見はそれ以上何も言わず、黙って見ていた。そして食事が終わると、伏見は改めて彼方を見る。


「ーーで?なんでついていこうとしたん?」

 その質問に彼方は俯くと、小さく答えた。それはとてもか細くて頼りない声だ。

「……私は……必要とされたかったんです」

「必要とされれば体も売るんか、アホなん?」

 嘲笑う伏見。彼方はキッと睨みつける。

「体目当てだろうが、必要されるなら、認めてもらえるなら、……なんだっていい!」

 彼方は半ばヤケクソに言う。人間誰しも承認欲求がある。自分の存在を認めて欲しいし、褒めて欲しい。だからこそ彼方は、自分を落とすような暴挙に出てしまった。彼方はただ、誰かに必要とされたかったのだ。そうすることで、彼方が自分自身を認めてあげることができるから。ここにいてもいいのだ、と。

 そんな彼方に伏見は鋭い眼差しを向けたまま、言葉を紡ぐ。


「ほな、僕がその人生もらうわ」

「え……」

「なんだってええんやろ?ほな捨てるのと同じや。捨てるんなら、僕がもらっても問題ないやんな?僕の手足として、駒として、キビキビ働かんかい」

 それは伏見なりの迎えの言葉で、彼方はあんな酷いことを言って出てきたのに、この人はこんな自分を迎えにきてくれるのだと実感して涙がでる。

「ここで泣くんかい。ほんまにピュアやな」

 伏見は優しく彼方の涙を拭った。その手の温もりが優しくて、ますます涙が止まらない。

「なんで……なんでそんなに……」

 そんな彼方の問いに伏見は静かに答える。

「そら、彼方は絶対僕のこと裏切らんからな」
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