この執着がやがて愛になる

Love5: あの子は僕のや。誰にも渡さへん

 彼方が伏見の補佐として会社に戻ってから数ヶ月経った頃。彼方は以前とは違う伏見とのやり取りに少し驚いていた。

 それは、たいした用もないのにやたらと彼方を呼んできたり。かと思えば、揶揄ってきたり。

 そして、それは二人きりの時だけで。他の社員がいる前では以前と変わらない伏見だった。
 彼方はそれが不思議で、しかしどこかくすぐったく思っていた。

 そんなある日のこと。伏見に呼び出された彼方は、執務室へ来ていた。ノックをして部屋に入るとそこには伏見が一人きりで待っていた。

「来たな」

 そう言って笑う伏見の笑顔は優しいものだった。そんな伏見の様子に戸惑いながらも、彼方は彼に近づく。すると突然腕を掴まれ引き寄せられたかと思うとそのまま抱きしめられた。

「あ、あの!伏見さん!?」

「ほな、みせてもらおうか?セクハラ対処法」

 伏見は笑いながら言う。しかし、その目は真剣で。

「セクハラ対処法……ですか?」

 彼方は意味がわからなくて首を傾げると伏見は口を開く。

「今な、やらしいこと考えてんねん」

 そう言って、伏見は彼方の腰に手を回すとそのまま引き寄せた。突然のことに驚くもすぐに体を押して抵抗するがびくともしない。

「……っ!そ、そんなこと……」

 戸惑う彼方に構わず伏見は顔を近づけてくる。思わず顔を背けるが顎を掴まれ正面を向かされ、距離が近くなる。

「ほら、はよう逃げへんと喰われてまうで?」

 伏見の目は明らかに楽しんでおり、彼方はこの揶揄いにどう対処するのが正解なのかわからなくなっていた。このように伏見は彼方の反応を面白がって度々このような絡み方をしてくる。しかし、今日はいつにも増して執拗だった。

「顔真っ赤にしてほんまに、かわええなぁ」
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