この執着がやがて愛になる
 その声とともに、彼方は背後から抱き締められる。伏見だ。いつの間にか営業から戻ってきていたようだ。

「伏見さん……っ!離してください!!」

「嫌や」

 抵抗するが腕の力は強く振り解けない。その様子を見た社長は少し楽しそうに笑う。

「伏見の執着心は凄まじいな?これはもう付き合うしかねぇんじゃないか?」

 そんな社長の言葉に彼方は首を横に振って拒否する。しかし、それも虚しく伏見に引きずられるようにしてその場から連れ出されたのだった。

***


「で?何勝手に口説かれとんねん」

 伏見の執務室で彼方はソファに座らされていた。目の前には伏見が腕を組んで立っている。そんな伏見に彼方は少し戸惑った表情で答えた。

「口説かれてないです……からかってるだけかと……」

 その返答を聞いて伏見は舌打ちをする。そして荒々しく彼方の隣に腰かけると、彼方の体を引き寄せた。

「ちょ!やめてくださいっ!」

 抵抗する彼方だったが、伏見の力には敵わない。そのまま押し倒されるような形になり、身動きが取れなくなった。そして至近距離で見つめられる形になる。

「ええか?きみは僕のもんやねん。他の誰に媚びてもあかん。僕だけや。僕だけのもんなんや」

 伏見の熱っぽい眼差しに彼方はドキドキしていた。しかし、これは恐怖からくるものだと言い聞かせる。騙されてはいけないと自分に何度も言い聞かせた。

 そんな彼方の様子に伏見は苛立つように眉を寄せると、強引に口付ける。そしてそのまま舌を絡ませてきたため、彼方は必死に抵抗した。しかし、伏見の力には敵わない。

「んっ……んんっ……!」

 息ができないほどの深いキスに頭がボーッとしてくる。それでもなんとか意識を保って彼方は抵抗する。伏見の胸を押すと、意外にもすんなりと離れていった。

「はぁ……はぁ……伏見、さん……?」

「僕だけのもんになってや」

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