策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい
 支社長は動画を消し、ちょっと悪い笑みを口の端に浮かべた。

 「あのさ、木谷。これって広告付きだよな」
 「はい……おかげ様でたくさんの方に観ていただけるようになったので」
 「こんだけPV数があるってことは、収入もまあまあ、あるんじゃない?」
 「いえ、ほんのお小遣い程度です」

  でもさ、と支社長はじっとこっちを見てきた。

 「稼いではいるんだろう。ということは、それって副業に当たるんじゃないかなぁ」
 「えっ?」
 「うち、副業認めてないんだけど」
 「うっ、そ、それは」

 そんなところを突かれるとは思ってもみなかった。
 しかも、真面目を信条としているわたしにとって、就業規則に反しているというのは見過ごせないことではある。

 でも、これは玖美との共同作業でもあるから、一人で勝手に決められないし。
 と、頭のなかで逡巡していると……

 「まあ……見逃してもいいんだけどね。気づいてるの、俺だけだし」
 そうやって語尾を伸ばして、流し目でこっちを見る。

 ……わかるけど。何が言いたいのか。
 「つまり、一緒に行くことが条件ということ、ですよね」

 「ほら、察しがいい。そういうとこ、ほんと好きだよ」
 そう言って、にっこり笑って、頭をぽんぽんしてきた。

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