策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい
 ……それ、反則でしょう。「好き」の後の、頭ぽんぽんとか。
 また不覚にも胸をズキュンと撃ち抜かれる。

 いや、何をキュンとしてるんだ、こら。

 弱みを握られて、言うことを聞かされそうになっているというのに。
 勝手に反応してしまうこの心臓、どうにかしたい。

 わたしが言い返せないことを見てとった支社長は、軽く背中を叩いてきた。
 「よし、そうと決まれば、行くぞ」
 「えっ? ど、どこに」
 「服、買ってやるよ。週末、付き合ってもらうお礼に。『WAKU∞』じゃなくて、もうちょっといい奴をな」

 ほらほら行くぞ、とせかされて、結局、わたしは支社長の車の助手席に乗るはめになった。

 ***

 駐車場に停まっていたのは、2シーターのオープンカー。今、ルーフは閉じてあるけれど。
 まあ、らしいといえば、これほど支社長らしい車もない。

 きっと、今までたくさんの女性を乗せてきたんだろうな。

 そう思ったとたん、キュンではなく、胸がズキンとちょっとだけ痛んだ。

 狭いなと思いながら助手席に座ると、なんだか嬉しそうな声で支社長が言う。

 「初めてだな、木谷が俺の愛車に乗るのは」

 そうすると、今度はまた、キュンが発動。



 もう、いくら不随意筋とはいえ、持ち主に逆らい過ぎだ、わたしの心臓。
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