策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい
 そんなやり取りを思い出しながら、待ち合わせ場所の改札前で待っていると、在来線の方から支社長がやってくるのが見えた。
 まだけっこう距離があるのに、圧倒的に存在感のある人なので、すぐに目につく。

 そういえば、プライベート仕様の支社長に会うのは、今日がはじめてだ。
 オンのときはきっちり整髪しているけれど、今日は前髪がほどよく額にかかった無造作ヘア。
 服装はラフなモスグリーンのハーフジップセーターにアイボリーのテーパード。
 
 ふわっ……この人、なんでこんなにカッコいいんだろう。
 変な声が出そうになった。
 破壊力、すごすぎる。

 思わず、のけぞりそうになっているわたしに、彼も気づいたようで、軽く片手を上げている。

 そして、目の前までやってきて「おっ、よく似合ってる。俺の見立てに間違いはないな」とふんふんと満足そうな顔。
 なぜか、ものすごく機嫌が良い。
 
 席は当然、グリーン車。
 わたしのキャリーケースを棚に乗せると、支社長は窓側の席を差し示した。

 「木谷、そっちに座れよ」
 「いえ、支社長を差し置いて、そんなことできません」と恐縮すると彼は眉をしかめる。

 
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