策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい
フロント係の人に「急用ができたので、部屋をチェックアウトしたい」と言って、財布からカードを出そうとしている最中に、支社長が慌てた様子でエレベーターから降りてきた。
「すみません、その部屋、そのままにしておいてください」
彼はカウンターに置かれていたキーを掴みとり「とにかく、ちょっと話そう」と、わたしのキャリーケースを持って、ラウンジに向かっていった。
わたしは後を追った。
「支社長、それ返してください」
「理由を聞いてからだ」
業を煮やして、わたしは立ち止まった。
支社長が振り返って、歩み寄ってくる。
わたしは彼を見上げた。
「理由は、もうこれ以上、嘘をつきたくないからです。明日は支社長お一人でなんとかしてください。申し訳ないですが、もう一切、協力はできません」
わたしがそう言うと、彼は驚くほど深々と頭を下げた。
土下座もしかねない勢いで。
「とにかく、帰る前に俺の話を聞いてくれ。有希乃、頼む」
なかなか頭を上げない支社長の態度に困惑して、わたしは小声で言った。
「支社長、こんなところで困ります。早く顔を上げてください」
わたしたちが言い合っていることに気づいて、周りの人たちもこちらの様子を伺いはじめた。
なにしろ、彼の家は地元の名士。
支社長の顔だって、知られていないとも限らない。
それにここに知り合いがいるかも知れないし。
今の様子を写真を撮られて、SNSでさらされて、問題になりでもしたら……
「わかりました。話を聞きますから」
支社長はようやく頭を上げて「ありがとう」と固い表情のまま、言った。
「すみません、その部屋、そのままにしておいてください」
彼はカウンターに置かれていたキーを掴みとり「とにかく、ちょっと話そう」と、わたしのキャリーケースを持って、ラウンジに向かっていった。
わたしは後を追った。
「支社長、それ返してください」
「理由を聞いてからだ」
業を煮やして、わたしは立ち止まった。
支社長が振り返って、歩み寄ってくる。
わたしは彼を見上げた。
「理由は、もうこれ以上、嘘をつきたくないからです。明日は支社長お一人でなんとかしてください。申し訳ないですが、もう一切、協力はできません」
わたしがそう言うと、彼は驚くほど深々と頭を下げた。
土下座もしかねない勢いで。
「とにかく、帰る前に俺の話を聞いてくれ。有希乃、頼む」
なかなか頭を上げない支社長の態度に困惑して、わたしは小声で言った。
「支社長、こんなところで困ります。早く顔を上げてください」
わたしたちが言い合っていることに気づいて、周りの人たちもこちらの様子を伺いはじめた。
なにしろ、彼の家は地元の名士。
支社長の顔だって、知られていないとも限らない。
それにここに知り合いがいるかも知れないし。
今の様子を写真を撮られて、SNSでさらされて、問題になりでもしたら……
「わかりました。話を聞きますから」
支社長はようやく頭を上げて「ありがとう」と固い表情のまま、言った。